【7月10日 AFP】デング熱などの感染症を媒介するネッタイシマカの繁殖を抑えるため不妊化させた雄を放出する実験がオーストラリアで行われ、蚊の個体数が80%以上減ったことが分かった。研究者らが10日明らかにした。世界各地に生息する蚊との闘いに希望をもたらす成果だ。

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 オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究者らが、豪ジェームズクック大学(James Cook UniversityJCU)の実験室で繁殖させた雄のネッタイシマカ(学名:Aedes aegypti)数百万匹を繁殖させ、生殖不能になる細菌「ボルバキア(Wolbachia)」を感染させた。

 これらの蚊をクイーンズランド(Queensland)州イニスフェイル(Innisfail)周辺の屋外実験区画に放出した。放出された雄の蚊は3か月間にわたり雌と交配。雌は産卵したが卵はふ化しなかったため個体数が激減した。

 ネッタイシマカは世界で最も危険な害虫の一つで、デング熱やジカ熱、チクングニア熱などの病原体を媒介し、全世界で毎年数百万人が感染している。

 JCUのカイラン・ストーントン(Kyran Staunton)氏は実験の成功は大きな進歩だと述べ、「今回は熱帯地帯における初の共同実験で、多くのことを学んだ。ネッタイシマカが生命と健康に脅威を与えている他の地域で、このアプローチがどのように適用されるか見ていくのが非常に楽しみだ」と話した。

 いわゆる不妊虫放飼法技術(sterile insect technique、SIT)はこれまでにも使われてきたが、効果を上げるには人工的に繁殖させた蚊から雌を除去して雄だけを選び、大量の雄の蚊を放出させなければならない。今回の実験ではグーグル(Google)の親会社アルファベット(Alphabet)傘下のライフサイエンス企業「ベリリー(Verily) 」が自社の国際デング熱プロジェクトの一環として開発した蚊の飼育、雄雌分別、放出技術が用いられた。(c)AFP