【7月12日 CNS】張宇飛(Zhang Yufei)さん(46)は、中国・山西省(Shanxi)の文化財の管理人だ。張さんが管理しているのは、山西省長子県(Zhangzi)の山奥にある、法興寺(Faxingsi)と崇慶寺(Chongqingsi)に陳列されている宋時代の彩色の塑像だ。

 法興寺は401年建立。境内の円覚殿には、宋時代に作られた12体の菩薩像が陳列されている。仏像は顔立ちが整い、調和がとれている。風格が威風堂々ゆったりとしている。崇慶寺には、1079年に作られた十八羅漢像が並ぶ。専門家に「大変珍しい仏像だ」と評価されている。

 1991年前後、崇慶寺の12体の菩薩像が盗難に遭った。犯人はその後逮捕されたが、管理部門は盗難を恐れていつもびくびくとしていた。間もなく、当時21歳だった張さんが毎月150元(約2500円)の給料で寺の文化財の管理人となった。

 張さんの回想によると、ここに来たばかりの頃は、寺の臥仏殿に住んでいた。建てつけが悪く、建物はぼろぼろだった。夏には、窓や部屋の隙間から月や星を眺めることができた。冬になると、隙間風が吹き込み、絶望を感じた。人里離れた場所から離れているため、張さんは食糧を山で現地調達するしかなかった。山にあるあらゆる山菜を試したという。

 当初の張さんの仕事は、再び盗難に遭わないように寺を管理することで、文化財の知識はまったくなかった。だが、何度も菩薩像の前でこの仏像の美しさはどこにあるのかと思いを巡らせていた。偶然、友人の家で閻文儒(Yan Wenru)が著した『中国彫像芸術概要』を読む機会があり、仏教美術の歴史と価値を理解した。

 80年代になると、法興寺がある長子県慈林山(Cilinshan)全体が炭鉱と化した。地盤沈下が発生し、寺の壁には亀裂が走り、梁(はり)なども変形してしまった。文化財の管理部門は、寺全体を近くの翠雲山(Cuiyunshan)に移転した。

 山西省の重要文化財と古代建築物の数は、中国全国でもトップクラスだ。張さんのように文化財を保護する管理人も多い。張さんは、仏教文化の解説員を育てて有意義な講座を開設し、山西省の南東部の伝統文化や仏像の物語を紹介したいと考えている。(c)CNS/JCM/AFPBB News