【7月9日 AFP】英ロックバンド「ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)」のボーカル、ミック・ジャガー(Mick Jagger)さんが8日、ポーランドの首都ワルシャワでのコンサートで民主主義を骨抜きにすると批判されている同国の司法改革に言及し、「神の祝福がありますように」と聴衆に語り掛けた。

 ポーランドでは愛国主義的な政治理念を掲げる右派の与党「法と正義(PiS)」が3日、最高裁判事の定年を引き下げる司法制度改革を断行。最高裁長官を含む裁判官73人の3分の1以上が早期退職を強いられることとなり、多くの市民が抗議デモを行っている。

 早期退職の対象となった最高裁長官のマルゴジャタ・ゲルスドル(Malgorzata Gersdorf)氏は、6年の任期終了前の解任は違憲だとして退任を拒否し、4日も普段通り出勤した。

 裁判官に早期退職を強いる司法改革は司法の独立と三権分立を揺るがす、と批判してきた欧州連合(EU)は2日、欧州の最高裁に当たる欧州司法裁判所(ECJ)への提訴も視野にポーランドに対する法的手続きを開始。6日にはゲルスドル氏の主張を支持し、PiSに司法の独立を復活させるよう求めた。

■「自由の象徴」からローリングストーンズに呼び掛け

 こうした中、ポーランドの反共運動と自由を象徴する存在として知られるレフ・ワレサ(Lech Walesa)元大統領(73)が7日、フェイスブック(Facebook)にローリングストーンズとジャガーさんに宛てたメッセージを投稿。司法改革に反対し、「自由を守ろうとする」ポーランド人への支持を表明してほしいと呼び掛けていた。

「俺は裁判官になるには年を取り過ぎているが、歌うだけの若さはある」。リベラル派の日刊紙であるガゼタ・ビボルチャ(選挙新聞、Gazeta Wyborcza)電子版が伝えたコンサートの映像で、ステージ上のジャガーさんはポーランド語でこう述べている。

 さらにジャガーさんは英語で「俺たちは昔、1967年にポーランドに来た」と続け、当時まだ「鉄のカーテン」の向こう側の共産主義国だった同国でローリング・ストーンズが行った初コンサートに言及。「皆さんが、あれから学んできた全てにしがみついていられるよう願っている。神の祝福がありますように!」と付け加えた。

 7日の投稿でワレサ氏は「今、ポーランドでは悪いことが起こっている」「多くのポーランド人が自由を守ろうとしているが、支援が必要だ。ポーランド滞在中に発言か行動で示してもらえれば、彼らにとっては本当に大きな意味を持つだろう」と訴えていた。

 自主管理労働組合「連帯(Solidarity)」を率いて自由のために闘い、共産政権崩壊後初の大統領に就任したワレサ氏は、1983年にノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を受賞している。(c)AFP