【7月10日 CNS】中国・吉林省(Jilin)にある桃花源(Taohuayuan)向海(Xianghai)環境保護センター王春麗(Wang Chunli)さん(28)は、著名な企業家である阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング、Alibaba Group Holding)のジャック・マー(Jack Ma)会長と騰訊(テンセント、Tencent)の馬化騰(Pony Ma)CEOの2人から、肉筆サイン入りのお祝いをもらうとは思いもしなかった。

「ダブル・マー」(二人の馬氏)によるサインは、同環境保護基金の共同主宰者で、王さんが白城市(Baicheng)の環境文明建設の3等賞を獲得したことに対して書いた感謝状だ。

 向海自然保護区は、312平方キロの中心地域と、175平方キロの環境保護センターの管轄区とがある。王さんの巡回保護チームは8人で、毎日このエリアを巡回し、2017年には約600件に上る違法行為を摘発した。

■一晩の対峙(たいじ)の末

 卒業後、すぐに向海での活動に身を投じた王さん、戸外の巡回が多く、同じ年頃の女性のようにきれいなスカートを身にまとったりハイヒールを履いたりしない。ジャングルスーツと登山靴が仕事服だ。野外で風にさらされ、日に焼けた皮膚は黒々としており、砂のためか黒髪の光沢は無くなってしまっている。

 それでも、王さんはやりがいがあると気にしない。自分の頑張りによって、タンチョウなどの希少鳥類が戻り、地元の人たちの環境保護への意識が変わってきたからだ。

 去年の夏のある日、王さんは同僚たちと巡回中だった。保護区の真ん中の湖畔に不審な車が止まっており、車内にはエアガンの部品が置かれていた。不法に狩猟を行う者がエアガンを持ってダムの水域に入った可能性のあることを、保護区の管理局に知らせた。まもなく、一人の男がアシの陰から姿を現した。すぐに、その男が凶暴で知られている劉という人物だと気が付いた隊員たちは、口々に王さんに言った。

「銃を持っているから、簡単な警告だけで終わらせよう」

「危ないやからだから、警察を呼んだほうが良い」

 王さんは構わずに一人で前に進み、尋問を行った。その結果、男は「俺の身に何か起きたら、お前たちもただでは済まない!」と捨てぜりふを残し去って行った。王さんと仲間は、この男が必ず戻ってくると判断し、現場を立ち去らずにいた。

「保護とか管理とか言っても、実際には我々が手を出せないと思っている人は多い」「もし私たちが動かなければ、誰も注意に耳を貸さなくなり、管理のしようがなくなる」

 警察は王さんたちの協力の下、男が捨てた武器を探し出して逮捕した。「あんたたちの言う保護管理は本気だったのだ」と事件後、ある村民は感嘆したという。