■スペースの共有

 まともな物件は、良い給与をもらっている人々にさえ手が届かないこともある。

 教師のジェズ・イン(Jezz Ng)さん(29)には、毎月3万2000香港ドル(約46万円)の収入があるが、家賃に大金を支払うよりも新たな住居形態であるシェアハウスに住むことを選択した。週末はいつも実家に帰っている。

 7人の女性たちと共有するマンションの一室で、インさんは小さな個室を借りているが、その広さはシングルベッドと机がちょうど収まる程度だ。

 このシェアハウスは、労働者階級が暮らす油麻地(Yau Ma Tei)にあるリノベーション済み集合住宅にある。同物件を所有する香港の不動産会社「ビブリオテック(Bibliotheque)」は、全15戸166室を1か月の家賃3500~6200香港ドル(約5万~8万9000円)で賃貸している。

 すべての居住者は、浴室やキッチン、プレイルーム、書斎といった共用施設を利用できる。

 AFPの取材に応じたインさんは、「賃貸物件を探し始めた時、私の予算は光熱費込みで最高8000香港ドル(約11万5000円)でしたが、簡素できちんとしたワンルームはこの予算を優に超えそうだった」と語った。

 彼女は今、1か月5600香港ドル(約8万円)の家賃を払っている。そのおかげで両親を経済的に支え、修士課程で学ぶ妹の学費も払うことができるという。香港では、仕事をしている若者たちが家族を経済的に支援するのが一般的だ。

「自分のマンションを持ちたいけれど、今のところは目標達成のための手段はない」「安定した職業に就き、給与も徐々に上がっているけれど、不動産価格の高騰にはついていけないでしょう」とインさんは語った。(c)AFP/Yan ZHAO