■健康上の脅威

 米調査会社デモグラフィア(Demographia)による2018年の国際住宅価格調査によると、香港の不動産価格は世界で最も高く、住宅価格の中央値は対平均所得比19.4倍と世界的に見て最悪の比率だという。

 中国本土の投資家や開発業者が注ぎこむ潤沢な資金によって不動産価格はさらに高騰しており、加熱する不動産市場を制御できていないとして香港当局は批判にさらされている。

 政府の公式データによると、新たに売りに出された430平方フィート(約40平方メートル)未満のマンションの60%以上は、投資目的の顧客に売却されたという。

 香港住民740万人の大多数にとって、マイホーム購入は高根の花になっており、開発業者らはより大きな市場を掘り起こすためさらに狭い物件を生み出している。

 香港の法律では、住宅面積の最小値に関する規制はない。

 公共政策を専門とするシンクタンク「Our Hong Kong Foundation」の上級研究員であるライアン・イップ(Ryan Ip)氏は、開発業者らが生活の質よりも利益を優先している現状を「不健康な」傾向だと指摘。

「狭小マンションを1平方フィートあたりの価格で見ると、より広いマンションよりも高額になることさえある」と語った。今後も住宅面積の縮小が進めば、心身の健康が損なわれることになるとイップ氏は考えている。

 賃貸物件の価格も急騰しており、政府が助成する公営住宅へ入居するのに5年も待たなければならないこともある。

 政府も現在、さまざまな選択肢を検討しており、新たな人工島の建設や、貴重な公園を住宅地として再開発する案などもある。