【7月8日 AFP】米国の学校で相次ぐ発砲事件の抑止策として、教師の銃携帯をドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が提案した際、大半の教育関係者はひどい嫌悪感を示した。しかしコロラド州の教師らは、学校でも銃を携帯することが可能になるよう行動を開始している。

 コネティカット州のサンディフック小学校では2012年、児童20人が死亡する銃乱射事件が発生。この事件をきっかけに、学校で発砲事件が起きた際の対処法を教える非営利団体「FASTER」が設立された。団体が教えるのは銃器の扱い方で、オハイオ州を中心にこれまで国内の教職員1300人以上に訓練を施してきた。

 このうちの63人は、1999年にコロンバイン高校(Columbine High School)銃乱射事件が起きたコロラド州の教職員だ。同州はいわゆる「スイングステート」で、知事の所属政党は民主党だが、上院議員は民主党と共和党とからそれぞれ選出されている。

 州都デンバー(Denver)西方のジェファーソン郡の小学校で1年生のクラスを受け持つケイティさん(27)は、苗字を伏せることを条件にAFPの取材に応じ、「皆、学校に武器を持ち込むことを怖がっていると思う」、「彼らは悪い面だけを見ている。銃は人の命を救うこともできるという肯定的な面は見ていない」と語った。

 ケイティさんは最近、デンバー郊外コマースシティー(Commerce City)で開催された3日間の講習会に参加したばかりという。参加費は1000ドル(約11万円)だ。

 銃規制強化を求める活動団体「Everytown for Gun Safety」によると、米国では学校での発砲事件がおよそ週に1度のペースで発生しており、こうした悲惨な事件が繰り返されているのは、世界の先進国の中で米国だけだという。

 米国では毎年、銃暴力により約3万3000人が死亡している。米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)のデータベースによると、米国の学校で発砲事件を経験したことがある児童・生徒の数は、1999年以降21万4000人を超えている。

 発砲事件が次々と発生し、議会がこの問題への解決策を見いだせず停滞する中、FASTERの収益は右肩上がりとなっている。こうした傾向は、今年2月14日に米フロリダ州で発生した銃乱射事件を受け、トランプ氏が教師の銃携帯を支持するようになる前からすでに現れていた。

 同団体のオハイオ州の責任者、ジョー・イートン(Joe Eaton)氏は、「需要に応えるため、今年は4講座を追加する必要があった。トランプ氏(の発言)とは関係ないと思う」と語る。