【7月7日 東方新報】「負けそうなチームに賭けていれば、別荘くらい買えてた。今夜の『台風』は本当に大きかった。言葉が何も出ない」

 6月18日早朝に行われたサッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)グループEのブラジルとスイスが引き分けた試合後。こんな言葉をSNSのモーメンツにコメントを残したのは、広州市(Guangzhou)の大学生塗越さん(仮名)だ。

 塗さんが悔やむ原因は、自分のひいきのブラジルチームの調子が悪かっただけではない。大学2年生の塗さんの半月分の生活費に相当する1000元(約1万6000円)を、サッカーくじで失ったからだ。

 W杯開催前、塗さんは「ちょっとやってみようか」という軽い気持ちで、携帯のサッカーくじ専用アプリから自信を持って数試合分の勝利チームに賭けた。しかし、予想を覆す結果に初めて、賭け事で損失を被る悲惨さを味わった。

 W杯開催が近づくにつれ、中国の大学生たちの中で「サッカーくじ」ブームが巻き上がっている。6月29日に広東省(Guangdong)の大学生169人に実施したアンケートによると、70%以上の大学生がW杯を見たといい、うち半数以上が自分の好きなチームのくじを購入したと回答している。

 しかし、一部の違法運営サイトが大学生の「遊び心」を利用し、知らないうちに大学生をわなに陥れている。

 アップストア(App Store)の統計によると、W杯開催の3日前、無料ダウンロードアプリランキングの上位10位のうち、五つがサッカーくじに関連したアプリだったという。広東省の学生を対象にしたアンケートでも、48%が自分のスマホからアプリを通じてサッカーくじを購入していた。また、85%が1試合に賭ける金額は100元(約1600円)以内で、そのほとんどが自分の生活費から捻出したという。

■まん延する「違法ギャンブル」

 中国の現行法では、インターネット上で宝くじを販売する行為は禁止されている。

 公的に宝くじやサッカーくじの運営や発売を行う中国福利彩票発行管理中心の担当職員は、「国内ではこれまで、いかなる運営サイトと機関に対しても、ネット上でくじ販売のライセンスを与えたことはない。にもかかわらず、ネット上に『ギャンブル』がはびこっている。国内のネットくじ販売を禁止して以降は、国外サイトで同様のものが発見されている。しかも国外サイトはいつでも賭けられるし、アプリの操作性もより簡単になっている」と話す。

 記者がある国外のサイトを開いてみたところ、コンテンツが非常に豊富だった。W杯以外にも大きなスポーツ大会の試合を賭けることができる。決済方法はクレジットカードのみで、掛け金をチャージできる仕組みにもなっていた。

 また別の情報によると、微信(ウィーチャット、WeChat)のグループチャット機能を利用してギャンブル行為を行っている人もいるという。

「グループチャット内でギャンブルを仕切る人は、ゲームを進行する『カジノディーラー』的な役割を持つ。多くが中国国外のギャンブルサイトや国内で違法サイトを運営する代理人だ。また、ギャンブルサイトの登録住所のほとんどが国外で、違法サイトの多くが国外のサーバーを借りて運営されている」。広東省のサイバー警察は現状について、非常に危険だと警告している。