■立ちはだかる大きな問題

 チームは英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された論文に、「生殖補助医療技術(ART)が、絶滅寸前の動物を象徴するキタシロサイの遺伝子を救うための実行可能な戦略の一つと考えられることを、今回の研究結果は示している」と書いている。

 だが、チームが構想するキタシロサイ個体群の再生には大きな問題がある。

 キタシロサイの雌が2頭しか残っておらず、さらに利用できる精子は死んだ雄4頭から採取したものに限られることから、ARTだけでは、種の繁栄に不可欠な遺伝的多様性を備えた個体群を再建できないことが考えられるのだ。

 研究者らはこの問題の解決策として、幹細胞技術を使い、互いに近親関係でない死んだキタシロサイ12頭の凍結保存した皮膚細胞から卵子と精子を作ることを視野に入れている。チームは「これにより、未来のキタシロサイ個体群の基礎を築く多様性が大幅に増大すると考えられる」と述べている。

 しかし、この計画には時間的制約があるという。生まれてくるキタシロサイの子を何らかの方法で社会に適合させる役目を担う個体が、この雌の2頭しか残されていないのだ。

「できるだけ早く成果を上げて、生まれてくる子サイがナジンとファトゥとともに成長できるようにすることが、研究意欲を高める側面の一つだ」と、ヒルデブラント氏は語った。(c)AFP/Mariette le Roux and Amelie Bottollier-Depois