■ラカイン州東部での「開発プロジェクト」

 長期に及ぶ帰還の遅れは、バングラデシュとの関係も損ねている。6月28日には、ロヒンギャの10歳の少年が緩衝地帯でミャンマー側から撃たれた。これに対しバングラデシュ政府は、ミャンマーに文書で抗議する方針だ。一方のミャンマー側は、国境のフェンスを壊そうとした人々に向けて発砲したと主張している。

 バングラデシュとミャンマーは、帰還の遅延について互いを非難している。ミャンマーはラカイン州東部で大規模な開発プロジェクトと称する計画に着手しており、ロヒンギャの街をブルドーザーで整地し、再建の名の下、地域全体に手を加えようとしている。

 6月29日に発表された人身取引に関する米報告書「TIP」は、弾圧を逃れてきたイスラム系少数民族のロヒンギャを保護することができず、ロヒンギャを搾取と人身売買組織の前にさらしたとして、ミャンマーの評価を一つ引き下げ、最低ランクの「ティア3」とした。

 ロヒンギャはラカインを自分たちの故郷と呼んでいるにも関わらず、バングラデシュからの不法移民との烙印を押され、ミャンマーでは多くから疎まれる存在となっている。

 暴力の中心となっているラカイン州マウンドー(Maungdaw)の地元行政官、イェ・トゥー(Ye Htoo)氏は報道陣に対し、ミャンマーは「ロヒンギャが戻ってくるならば、(彼らにとって)良い環境を整備する用意がある」と述べたが、同時にトランジットキャンプには「誰もこない」ことを認めた。(c)AFP