【7月4日 AFP】タイ北部チェンライ(Chiang Rai)県で、大雨により洞窟に閉じ込められていた少年サッカーチームの捜索活動では、世界中の困難な救助活動に挑んできた2人の英国人ボランティアダイバーが、少年らの発見に貢献した。

 英国から捜索活動に参加したのは、普段は消防士として働くリチャード・スタントン(Richard Stanton)さんと、ITエンジニアのジョン・ボランセン(John Volanthen)さん。2人は、行方不明になってから9日が経過していた少年12人とコーチ1人を見つけるため、水位が上がった洞窟の長く曲がりくねった通路を進み続けた。

 捜索隊にはさらに、もう1人の英国人、ロバート・ハーパー(Robert Harper)さんに加え、タイなど世界各国の専門家らが参加していた。英国のボランティア救助団体「英洞窟レスキュー協会(BCRC)」のビル・ホワイトハウス(Bill Whitehouse)さんによると、その中でもスタントンさんとボランセンさんは捜索隊の「最前線」に立っていたという。

 救助隊と短い会話を交わしたというホワイトハウスさんは英BBC放送に対し、2人が「最後の区間を潜り、行方不明の一行が高台にいた空間にたどり着いた」と説明。「上流に向け潜っていたため、水流に逆らって泳いだり、壁に沿って自分の体を引っ張ったりする必要があった」と述べた。実際の潜水区間は約1.5キロだが、うち半分ほどが完全に水に浸かっており、総潜水時間は約3時間だったという。

■「やらなければならない仕事がある」

 イングランド南西部ブリストル(Bristol)在住でITエンジニアのボランセンさんと、同中部コベントリー(Coventry)在住の消防隊員であるスタントンさんは、過去にも難易度の高い潜水活動に参加してきた。

 50代半ばのスタントンさんは2012年、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)から大英帝国勲章第5位のメンバー章(MBE)を受け取った際、地元紙に対し、自身の最大の功績はメキシコの洞窟に閉じ込められた英兵6人の救出活動に協力したことだと回想。洞窟潜水を始めたのは18歳の時、テレビのドキュメンタリー番組を見たのがきっかけで、当初はただの「趣味」だったという。

 一方、40代とされているボランセンさんは2013年、サンデー・タイムズ(Sunday Times)に対し、洞窟潜水に必要なのは冷静さであり、「パニックとアドレナリンは特定の状況では有効だが、洞窟潜水ではそうではない」と話していた。

 タイ入りした2人はメディア取材を避けており、ボランセンさんは現場に到着した際に記者団に対し、「やらなければならない仕事がある」とだけ語った。(c)AFP