【7月7日 AFP】デンマークの自治領、フェロー諸島では何世紀にもわたり儀式としてゴンドウクジラの追い込み漁が行われてきた。浅瀬に追い込んで浜へ乗り上げさせナイフで仕留めると、辺り一面の海は血で真っ赤に染まる。

「グリンダドロップ」(グリンド)と呼ばれるこの漁は、動物保護団体から無慈悲で残酷だと非難されてきたが、フェロー諸島のヘグニ・ホイダル(Hogni Hoydal)漁業相は「環境に優しく」「敬意を払っている」と主張する。AFPがホイダル氏にインタビューした。

Q:国外で非常に物議を醸しているこの漁は、なぜフェロー諸島では不可欠だと考えられているのか?

A:グリンドの重要な点は、これが私たちの海洋生物資源の一端を担っていることだ。福祉社会であり、世界の一員でもあるフェロー諸島の存在意義と近代化は、海洋生物資源の持続的利用を基盤としている。

 その一部を1000年以上にわたって支えてきたのがゴンドウクジラだ。私たちの年間平均捕獲数は、北大西洋のフェロー諸島周辺海域に生息するゴンドウクジラの個体数の1%を下回っていることを示す450年前からの統計もある。

 特にこの漁に抗議している環境団体と議論する際、私たちは「この漁こそがおそらく最も環境に優しく、最も持続可能で、最も管理された海洋資源の利用法の例だ」と答えている。

 ゴンドウクジラを捕獲しなければ、私たちは畜牛や牛肉、鶏肉などを輸入しなければならなくなる。私に言わせればそうした動物たちは、最悪の条件下で生産されていて、持続的ではなく、工業的な生産方法によって環境を汚染し、世界の野生生物資源のほとんどの破滅にもつながっている。

 したがって私たちは、動物を大いに尊重し、存続可能な生息数のほんの一部しか捕獲していないフェロー諸島こそが、天然資源を過剰搾取せずに持続可能な利用方法で他国をけん引していると考えている。

Q: つまり、捕鯨は地球に優しい、ということか?

A: 肉を輸入すれば、(原材料調達から廃棄・リサイクルまでに排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算した)カーボンフットプリント(CFP)が増加する。工業生産された牛肉や鶏肉を買う方がよいと言うのか?

Q: だが、血なまぐさい漁と常に結び付けられて、フェロー諸島のイメージダウンになる恐れがあるのでは?

A: 私の経験では、皆ここへやって来て、海洋資源の持続可能な利用方法を実際に体験してみると…フェロー諸島の社会制度はおそらく世界で唯一、商業的な利益なしに食糧を分配できている(ことが分かる)。

 ここに来る人はそのことを尊重してくれていると思う。もちろん、気持ちは分かる。特に大型動物が殺されるところを見たことがない人は、その光景を見て感情が揺さぶられるだろう。私が幼少の頃はヒツジを飼い、それを殺していた。食糧がどこからやって来るのかを知っていることは、フェロー諸島の現代生活における自然な部分でもある。