■「食べてはいけない」と当局は勧告、クジラの肉に高濃度の水銀蓄積

 以上がホイダル氏の回答だが、一方でフェロー諸島の公衆衛生当局は、ゴンドウクジラの肉を食べることは人体に有害だとして警告を発している。

 保健衛生当局のトップを務めるパル・ウェイエ(Pal Weihe)氏は、ゴンドウクジラの肉を食べないようにと呼び掛けている。「ゴンドウクジラの肉を食べると、フェロー諸島の住民の健康に非常に問題があることが分かったので、文化的な部分は犠牲にしてほしいと言っている」

 そうAFPに語ったウェイエ氏は、「もちろん、伝統的な食べ物の消費をやめるには犠牲を伴う」と強調した。「デンマークや英国で朝食にベーコンを食べるのをやめたら、文化の一部が失われるだろう。ゴンドウクジラの肉は私たちの生活の一部であり、アイデンティティーであり、文化だ」

 しかし、ゴンドウクジラの肉には、産業界から環境に排出された高濃度の水銀や残留性有機汚染物質(POPs)が蓄積されている。

 ウェイエ氏は1998年の段階で、ゴンドウクジラの肉を食べるのは月1~2回に制限すべきだと提唱し、妊婦や子どもを産む予定の人は一切食べてはいけないと警鐘を鳴らした。その後、さらに毒性基準は改善され、2008年にはフェロー諸島の住民全員に勧告の対象が拡大された。

 ウェイエ氏は「もう食べてはいけない、と私が言っているのはつまり、『ゴンドウクジラをもう殺すな』というのとほぼ同義になる」とする一方で、「(捕鯨に)干渉しているつもりはなく、食べてはいけないと言っているだけだ」と語った。(c)AFP/Pierre-Henry DESHAYES