■社会から取り残された人々

 世界保健機関(WHO)によると、世界人口の約15%には何かしらの障害があるという。しかし、貧しく、内戦により荒れ果て、機能不全に陥っている南スーダンでは、状況を把握するために必要となる正確な保健統計はほぼ皆無だ。

 赤十字国際委員会(ICRC)は、南スーダンの切断患者の数を約5万人と推計している。しかし、この数字は2012年以来更新されておらず、内戦の影響もきちんと反映されてはいない。

 それでも、南スーダンの障害のある人の割合が、世界平均を大幅に上回っていることを示す事例証拠はある。10年ほど前までまん延していたポリオなどの予防可能な疾患や回避可能な出産時の合併症、戦闘よって引き起こされる精神疾患やけがなど、その状況は悪化しているのだ。

 障害者支援団体「ライト・フォー・ザ・ワールド(Light for the World)」のソフィア・ムハンマド(Sophia Mohammed)氏は、「障害者は社会から最も取り残されている存在」と話す。

 マハドのような避難民キャンプでは、道がぬかるんででこぼこしている。トイレも水洗式ではないことから、単に用を足すだけでも困難が伴う。だが、ライト・フォー・ザ・ワールドの支援により、歩行器が用意され、障害者に配慮した手すり付きのトイレも設置された。ニャメットさんは今、理学療法も受けている。

 南スーダンでは2015年、障害者支援法が可決された。しかし、医療に充てられる国家予算は3%にとどまっている。その一方で、軍事費への割り当ては最も大きい。障害者は支援を受けるどころか、ないがしろにされていることの方が多いのだ。

 慈善団体「ヒューマニティー・アンド・インクルージョン(Humanity and Inclusion、旧名:ハンディキャップ・インターナショナル、Handicap International)」のケリー・セイヤー(Kelly Thayer)氏は、「社会の意識を変える必要がある。障害者の多くは、名前ではなく障害の名称で呼ばれている。障害は社会的な大きな烙印となっている」と現状について説明した。(c)AFP/Stefanie Glinski