【6月25日 東方新報】サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)期間中は、企業にとってまたとない宣伝のチャンスだ。4年に1度のW杯は注目度も高く、消費者との距離を縮める「黄金期」であり、知名度を上げてブランドの国際化を図るチャンスでもある。しかし、広告合戦で視聴者の論争を巻き起こした企業も少なくない。

■「洗脳式」広告?

 中国の求人サイト『BOSS直聘』のテレビCMは、「仕事を探すなら直接BOSSと話し合おう!仕事を探すならBOSS直聘サイト!昇級、昇給……」と、白いワイシャツを着た人物が顔にサッカーファンのようなペイントをして横断幕を広げ、声を張って同じことを何度も叫んでいる。

 これを見た視聴者は、インターネット上で「まったくオリジナリティが感じられないし、強制的に聞かされている感覚で反感を覚える」「BOSS直聘の広告を見るたびにテレビを破壊したくなる!」などとコメントした。

■「中国一」が論争巻き起こす

 ドイツ対メキシコの試合会場で、海信集団(Hisense Group、ハイセンス)が打ち出した「海信テレビは中国一」という中国語の広告が、むやみに自社商品が他社よりも著しく優れていると一般消費者に誤認させるおそれのある、中国の「広告法」における「絶対化用語」に当たるのではとし、インターネット上で物議を醸した。

 広告の専門家は、「『中国一』といった言葉を使うには、データの信ぴょう性や正確性が必要になる。また、何が『中国一』なのか、出荷量なのか、保有量なのか、もしくは売上額なのか。明確な情報がなく、消費者が誤解しやすく、同業他社にも不利益が生じる可能性もあり、中国の『広告法』で禁止されている範囲に該当する」と説明している。

 人々の関心をひきつけることで利益を生み出す「眼球経済」時代の今、一部の広告制作社は過度に「独自性」を強調しすぎて、視聴者の気持ちやクチコミ効果を忘れてしまうことがある。

 広告業界の関係者は、「一部企業の製品は他社製品との差別化があまりできておらず、何度も商品名を連呼して知名度を上げようと、洗脳式の広告になりがちだ」と話す。

 中国人民大学(Renmin University of China)法学院の劉俊海(Liu Junhai)教授は、「広告マーケティングは、企業にとって、ブランドの知名度を上げるためには重要だが、企業好感度はもっと重要だ。視聴者に覚えてもらうだけがいい広告とは言えない。反感を買ってしまう広告は不適切だ」と指摘する。

 劉教授はまた、「広告には合法性と真実性、公平性のほかに上品さやセンスも必要だ。洗脳式や『絶対化用語』に頼るのではなく、自社の商品が深く視聴者の心に届くような、物語性や温度があり、見る人を楽しませるようなものであるべきだ」と話している。(c)東方新報/AFPBB News