■「30年遅れている公共政策」

 若者の性習慣のこのような進化は、概して保守的なチリ社会の大部分、とりわけ政治家らを困惑させている。

 ディデス氏は「当局の見解と今日の現実の間には、完全な食い違いがある。政府も議員たちもこれを直視することを避けており、公共政策は30年遅れている」と語る。性教育は約10年前、主に保守勢力の反対によって、チリの高校から姿を消している。

 調査ではチリの15~29歳の71%が性的に活発だと答えている一方で、HIV検査を受けたことがあるという回答は30%だけだった。国立青少年研究所の統計によると、どんな性行動が危険かを知っているのはわずか20%だ。

 保健省の統計によると、15~24歳の間でのコンドームの使用は、2016年から17年の1年間で30%から22%に落ち込んでいる。専門家らによると、その原因は主として、危険はほとんどないという認識によるものだという。

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)チリ支部代表のカルロス・パッサレリ(Carlos Passarelli)氏は、数年前からHIVに対する社会の見方が非常に変化していると指摘する。先のベルトラン氏は「チリの若者はもはやエイズを恐れていない。感染者と性関係を持ち、自らウイルスに身をさらすばかりになっている」と語る。