【6月21日 AFP】世界の原生林が2014年から2016年までの間に年間約9万平方キロのペースで縮小したとの研究結果が今週、英オックスフォード(Oxford)で開催された国際学術会議で発表された。この森林縮小ペースは、オーストリアの国土に匹敵する面積の原生林が毎年失われたことを意味するとされ、それ以前の13年間に比べて20%加速しているという。

 衛星画像の分析によると、森林破壊を食い止めるための国連(UN)主導の取り組みにもかかわらず、2000年以降、手付かずの森林の10%近くが、細分化や劣化、もしくは単に伐採されているという。今世紀最初の17年間では、平均で毎日200平方キロ以上の原生林が失われた。

 今回の研究に参加した世界資源研究所(WRI)の上席研究員、フランシス・シーモア(Frances Seymour)氏は「原生林の規模縮小はまさに世界規模の悲劇だ。気候安定性の重要な基盤を人間が組織的に破壊し続けているのだから」と語り、「炭素を取り込んで蓄えるためのインフラとしては、森林は地球に存在する、効果が実証済みで費用のかからない、唯一の安全な天然のインフラだ」と続けた。

 さらに原生林は、生物多様性、気候の安定性、清浄な空気、水質などを維持するのに重要な役割を果たしている。また全世界では、約5億人が森林に生計を直接的に依存している。

 湿地帯や自然の草原などをその一部に含める場合もある、いわゆる「手付かずの森林地形」とは、少なくとも500平方キロの範囲にわたり、人間が広域的に利用したことが視認できる痕跡が衛星画像に存在しない領域として定義されている。これは具体的には、道路、産業型農地、採掘場、鉄道、用水路、送電線などが存在しないことを意味する。

 2017年1月の時点で、この基準にまだ当てはまる森林は全世界で約1160万平方キロ存在していた。

 今回の研究を率いた米メリーランド大学(University of Maryland)のピーター・ポタポフ(Peter Potapov)准教授は、AFPの取材に「多くの国々が、今後15~20年以内に国内の原生林をすべて失う可能性がある」と語った。

 現在の傾向が続くことで、2030年までに原生林が姿を消す国はパラグアイ、ラオス、赤道ギニア、2040年までに消失する国は中央アフリカ、ニカラグア、ミャンマー、カンボジア、アンゴラとされている。

 原生林縮小の主な原因については、熱帯諸国では農地への転用や伐採となっている。また、カナダや米国では火災、ロシアやオーストラリアでは火災、採掘、エネルギー採取などにより森林破壊が進行している。

 2000年~2013年と2014年~2016年のそれぞれの期間における森林の年間減少量の比較では、ロシアは平均で90%ずつ減少量を増やしていった。インドネシアでは同62%、ブラジルでは同16%だった。

 今回の研究結果は、衛星画像の地球規模の分析に基づくもので、2008年に初回、2013年に2回目が実施された調査をベースとしている。(c)AFP/Marlowe HOOD