【6月20日 AFP】サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)で17日、メキシコが初戦で前回王者のドイツからゴールを奪い勝利すると、喜びに沸くファンによってメキシコ市に「人工地震」が起きたという内容のツイッター(Twitter)投稿が拡散した。

 だが、専門家によると、実際にはそのような地震は起こっていない。

■検証の対象

 問題のツイートは、「地質・大気研究所、地震・火山局(SIMMSA)」と名乗るアカウントによるもの。

「メキシコ市で検出された地震は人工的に起こされたものだった。W杯でメキシコ代表がゴールを決め、大勢の人が跳びはねたことが原因の可能性がある。メキシコ市にある少なくとも2つの計測器が、11時32分に地震を感知した」という内容だった。

 歓喜に沸くメキシコのファンが「地震」を起こしたという話は、世界中のメディアに取り上げられた。

■分かっている事実

 メキシコで地震活動を観測している公的機関、国立地震学サービス(National Seismological Service、SSN)からは、17日にメキシコ市で地震が起こったとの発表はない。

 SSNの会員で、メキシコ国立自治大学(UNAM)地球物理学研究所のショーリ・ラミレス・カンポス(Xyoli Ramirez Campos)氏は、大勢の人の動きが地震計に計測されるような振動を作り出すことはあり得るが、地震による波形とは異なると指摘する。

「例えば、プーマス(クラブ・ウニベルシダ・ナシオナル、Club Universidad Nacional)の試合で、6万人を超える人たちが同時にジャンプすれば、検出可能な振動が起こる」と同氏は言う。「だが、グラフ上では地震ではなく振動として現れる」

 スペインのマドリード・コンプルテンセ大学(UCM)の地質学者ハビエル・カルモナ(Javier Carmona)氏は、似たような現象がFCバルセロナ(FC Barcelona)の試合でも起こっていると指摘する。

「バルサがゴールを決めるたびに、バルセロナの地球科学研究所は同じ現象を検出した。だが、地震を引き起こしたというのは正しくない」とカルモナ氏は述べた。「メキシコのゴールが地震を引き起こしたというのは真実ではない。地震学上は、地震とは異なる振動として現れているはずだ」

 ラミレス・カンポス氏は、今回のツイートが拡散するまで、SIMMSAの存在を知らなかったと指摘し、「地震学の関係者の間では知られていない研究所だ」と述べた。

■導き出せる結論

 大群衆の動きは地震計で検出され得るが、地震を引き起こすことはない。メキシコ市で17日に地震が起こったという証拠はない。(c)AFP