【6月20日 AFP】人間は極度の高地で育つと、成長過程で身体がエネルギーの節約を余儀なくされ、腕が短くなる可能性があることが、20日に発表された研究論文で明らかになった。

 英国王立協会(Royal Society)のオンライン科学誌「ロイヤルソサエティー・オープンサイエンス(Royal Society Open Science)」に掲載された論文によると、高度3500メートル以上で生まれ育ったネパール人の男女は、類似の祖先を持つ低地出身の人々と比べて前腕が短い傾向があることが分かった。一方、興味深いことに、前腕と隣接する上腕と手については、両者に差はなかった。

 これまでの研究ではペルー人の子どもらに同様の傾向が発見されており、山岳地帯の過酷な条件がその一因とする説を裏付けている。

 今回の研究結果からは数々の疑問が生まれている。まず、高地生活における何が体形変化をもたらすのかだ。研究論文の主著者である英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のステファニー・ペイン(Stephanie Payne)氏は「最も可能性が高いのは、酸素摂取量を向上させようとして起こる適応だ」と述べる。

 同様の理由で、ヒマラヤとアンデスの先住民には、肺活量を大きくし酸素の取り入れを増やすのにより有利な、たる状の胸の人が多い。

 空気中に含まれる酸素の割合はどの高度でも21%で変わらないが、山岳地帯では大気圧が下がるために酸素が少なく感じられる。この「有効酸素」を基準とすれば、高度3500メートルでは海面と比べてそのレベルが40%以下になる。

 高山地域では、摂取可能酸素量が少ないために食物のエネルギー変換が非効率となり、成長のために使えるエネルギーが減ることになる。これは低栄養の食生活と組み合わさると特に顕著となる。