【6月20日 AFP】ベルギー・ヘント(Ghent)で19日、聖バーフ大聖堂(St Bavo's Cathedral)の祭壇画で初期フランドル絵画の最高傑作といわれるファン・エイク(Van Eyck)兄弟の「神秘の子羊(Adoration of the Mystic Lamb)」の一部が、丹念な修復作業を終えて公開された。

「神秘の子羊」はヤン・ファン・エイク(Jan van Eyck)と兄のフーベルト・ファン・エイク(Hubert van Eyck)が1432年に完成させた作品で、聖書の場面や、欧州の毛織物貿易の中心だった頃のヘントの日々の生活をうかがわせる物が描かれている。

 ちょうつがいで開閉できるようになっている12枚のパネルから構成され、全体の大きさは縦約3.4メートル、横約4.4メートル。公開された中央部のパネルは修復によって「さらに表現豊かで感動的」な作品としてよみがえった。

 王立文化遺産研究所(Royal Institute for Cultural Heritage)の美術修復家らは2012年に作業を開始し、最近の数か月は羊の頭が描かれた祭壇画中央部のパネルに上塗りされた絵の具を除去する作業を集中的に行っていた。

 修復作業の中で、世界で最も盗難回数の多い絵画の一つとして知られるこの祭壇画に関して驚くべき発見があった。

 修復チームのリーダーを務めるエレーヌ・デュボア(Helene Dubois)氏はAFPに対し、「子羊の頭部は16世紀以降知られてきた姿とはだいぶ異なっている。子羊は強烈で表情豊かな印象を放ち、大きな目で見る人に直接訴えかけてくる」と説明した。「16世紀にこのパネルがどれほど上塗りされたか分かっていなかったが、私たちはファン・エイクが描いた本来の姿を再び明らかにした」

 同祭壇画は600年前に聖バーフ大聖堂で初めて披露されたが、その後パネルごとに分割されて輝きを失い、ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte)やナチス・ドイツ(Nazi)の手に落ち、さらには盗難被害にも遭った。

 デュボア氏によると、全12パネルの絵がすべて修復されるのは2019年末の見込み。その翌年の2020年は「ヤン・ファン・エイク年」としてさまざまなイベントが予定されている。

 映像冒頭は、修復前の絵画「神秘の子羊」。2016年10月16日、2018年6月18日撮影。(c)AFP