【6月18日 東方新報】中国インターネット系保険の「衆安保険(ZhongAn Online Property & Casualty Insurance)」が「百万医療保険」と呼ばれる新型保険商品「尊享e生(Personal Clinic Policy)」を市場に投入してから2年が過ぎようとしている。

 この間、競合他社も相次いで同種の保険商品を世に送り出し、現在では、30種を超える「百万医療保険」が競って販売されている。

「百万医療保険」は、支付宝(アリペイ、Alipay)、微信(ウィーチャット、WeChat)などのサイトで評判が良い。「尊享e生」「好医保(Haoyibao)」「微医保(Weiyibao)」などは、たった100元(約1700円)か200元(約3400円)の保険料で500~600万元(約9000万~1億円)までの医療費をカバーできる。あまり検討をせず買ってしまう人がいる一方、短期(掛け捨て)保険としての問題点を心配する人もいる。

 王さん(35)が支付宝で見つけたある保険商品は、300元(約5200円)を支払えば最高600万元(約1億円)までの医療費を保険でカバーできるという内容。健康診断は不要で、自分は健康だという自己申告で済む。1か月の猶予期間は必要だが、病気になったとしても、公立病院の普通外来で支払った医療費であれば、社会保険でカバーされる部分を控除し、免除約款の1万元(約17万円)を控除後、残りは保険でカバーできる。仮に、かかった医療費が10万元(約173万円)の場合、社会保険による負担が30%、ここから1万元の免除額を差し引き、残った6万元(約100万円)を「百万医療保険」が負担する。

 保険でカバーできる最高額は、600万元(約1000万円)まで。王さんがこの保険商品の支払いを済ませるまで、わずか10分とかからなかった。

 ただ、王さんは自分と家族のためにこの保険を購入したが、「契約満了後に販売停止とならないか、今後の保障は受けられるのか、保険料がアップしないか、60歳を超えたら別の保険に入れなくなるのではないかといったことが心配だ」と言う。

 中国・保険監督委員会(CIRC)が2006年に定めた「健康保険管理弁法」では、保険契約が満了し、保険の付保者が契約延長を求めた場合、保険会社は元の契約の料金と契約条件を継続しなければならない、とある。

 だが、現時点で、永遠に継続できると保証している「百万医療保険」はひとつも無い。「人保健康(PICC Health Insurance)」の「好医保」は最長6年間の契約継続を保証しており、これが現時点では最も有効期間の長い保険商品だ。

 専門家は、短期掛け捨て医療保険の最大のリスクは、契約継続が保証されていない点だと指摘する。仮に30歳の消費者が200元(約3400円)で「百万医療保険」を購入し、継続して5年間契約延長をしたのちにこの保険が販売中止となった場合、保険会社は契約継続の責任を負う必要はない。

 もしこの人がその5年の間に疾病にかかった場合、他の保険商品を購入することは断られるかもしれないし、60歳以上の場合は、付保を拒否されるか、あるいは高額の保険料を強いられる可能性もある。

 給付限度額を引き上げて保険商品を売ろうとすることは、一種の販促のための手段でしかない。「百万医療保険」は、公立病院の一般外来での診療が前提で、対象は1年内に発生した医療費なので、実際に医療費が100万元や1000万元を超えることはない。超高額の給付金は、消費者の精神安定剤のようなものでしかない、と専門家は指摘する。

 天津(Tianjin)保険監督局は4月18日、「百万医療保険」について具体的な要求を書面で命じた。第一に、販売においては、付保者に対し、短期掛け捨て保険で、契約期間は1年で、販売中止あるいは契約変更のリスクがあること、契約延長は保証されないことなどを明確に説明することを求めた。

 第二に、保険金の支払いを求める求償審査において、審査の細則を明確にし、明確な論理のもとで査定し、人の手による審査を少なくすることでグレーゾーンを最小化すること。第三に、賠償を実行する際は、専門人員を十分に配置し、必要な調査を行い、必要に応じて賠償し、付保者の合法的権利を守り、詐欺行為を回避すること、と指示した。

 中国・保険監督委員会も先月、「百万医療保険」についての具体的な禁止事項を発表した。費用補償型の医療保険、盲目的な高額給付限度額の設定、短期掛け捨て保険に「終身給付限度」などの長期保険の概念を入れること、保険商品の機能を誇大宣伝し市場をかく乱することなどは、いずれも禁止事項とされている。(c)東方新報/AFPBB News