【6月17日 東方新報】劉子航(仮名)は十数年前に安徽省(Anhui)から上海(Shanghai)に出てきて、ダフ屋を始めた。以前は電車の切符を売りさばいていたが、この2年はコンサートや舞台のチケットに軸足を移した。多い時には一晩で1〜2万元(約17万〜35万円)の稼ぎになるが、列車の切符と違って払い戻しができないなど、リスクもある。

■取り締まりの厳しさ、歌手の人気……ダフ屋は情報戦

 また、ダフ屋は、行ってはいけない場所も知らなければならない。

 私は鄭州市(Zhengzhou)では6枚、常州市(Changzhou)では10枚を警察に没収された。友人は東北地方で私服警察に見つかり、チケットを没収されて数万元の損失が出た。複数のチケットを手にしているだけで、捕まる地域もある。これらの場所にダフ屋は足を踏み入れない。

 言い換えれば、ファンはそういう場所に行けば、適正価格で演目を楽しめるというわけだ。

 中国は広く、特定の地方で人気を集める芸能人もいる。上海、成都(Chengdu)など南部で人気の歌手もいれば、その逆のケースもある。ダフ屋のチケットの売り値もそれに左右される。

■仕事について何も訊かない息子

 私は今年で31歳になる。この業界には10代から60代までさまざまな年代の人がいる。稼ぎに年齢は関係ないが、それでもダフ屋は若者が多い。稼ぐダフ屋は大量にチケットを集め、1回で数十万、数百万元と稼ぐ。

 私には小5の息子がおり、6歳の時から、全寮制の私立小学校に通わせている。全国各地を転々としている私に代わって、実家の両親が面倒を見てくれている。

 息子は本当に頭が良くて、学年トップを争っている。校長に、「家で誰が勉強を教えているのか」と聞かれたこともあるが、この子の祖父母は字が読めない。子どもは私に、「ぼくも頑張るからお父さんも勉強しよう」と言う。

 息子は私がダフ屋をしていると勘づいているだろうが、何も聞かない。学校が休みになると、私は息子を連れて遊びに行く。上海は何度も回った。

 けれども、コンサートや舞台には連れて行ったことがない。自分は売れ残ったチケットで観ることもあるが。大人気の舞台を、途中から観たことがあるが、会場が暖かくて眠ってしまった。自分にとっては、何が面白いのかよく分からない。

 ダフ屋のリスクは以前に比べて大きくなっている。警察もしょっちゅうやってくる。

 私もこれまで、2回捕まった。そのうち1回は一週間留置された。おかゆとまんじゅうだけの食事。もう二度と経験したくない。(c)東方新報/AFPBB News