【6月13日 AFP】世界的にサンゴ礁が減少することで、沿岸部での水害の規模が2倍に、高潮に起因する損壊が3倍にそれぞれ増加するとの研究結果が12日、発表された。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された研究論文によると、地球温暖化による海水面の上昇が予測されているのに加えて、サンゴ礁の減少が起きることにより、洪水の発生件数が今世紀末までに4倍に増加する可能性があるという。

 衝撃を緩和するサンゴ礁がなければ、100年に1度規模の低気圧がもたらす被害が倍増し、損害額が数百億ドル(数兆円)に及ぶ恐れがあることが、今回の推算結果で明らかになった。

 自然保護団体ネイチャー・コンサーバンシー(Nature Conservancy)の主席科学者で、米カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California, Santa Cruz)のマイケル・ベック(Michael Beck)教授は「サンゴ礁は、波を砕いて波のエネルギーを減少させることによって洪水を減らす自然の水中防波堤として機能する」と説明する。

「残念なことに、現在すでに世界各地の浅場サンゴ礁の高さと複雑性が減少しつつあるため、多くの熱帯沿岸地域で洪水被害の増加がすでに起きている可能性が高い」と、ベック教授はAFPの取材に語った。

 サンゴ礁はすべてが衰退傾向にあるわけではなく、白化、魚の乱獲、嵐などの影響から回復することができると、ベック教授は指摘した。

「だが、サンゴ礁地形全域にわたる重大な消失の全体的傾向が明確に認められる」

 浅場サンゴ礁が存在する海岸線は全世界で7万1000キロに及び、熱帯地方に集中しているが、その大半は沿岸開発、砂の採掘、ダイナマイト漁、工業や農業の排水などによって大きな打撃を受けている。

 また、サンゴは海水温の急激な上昇に対して極めて弱い。海水温の上昇は気候変動に伴って変化の度合いが大きくなるとともに、発生頻度も増加している。

 世界のサンゴ礁は、地球の平均表面温度が産業革命前の水準より2度上昇すると壊滅的な大量死を引き起こす危険性があることが、過去の研究で明らかになっている。