【6月14日 AFP】ロシアの売春婦たちにとって、サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)の期間中は稼ぎ時のように思えるが、警察の通告により、彼女たちの多くは試合開催都市に寄りつくこともなく終わりそうだ。

 ロシア40都市以上にメンバーを持つ国内唯一のセックスワーカー団体「シルバーローズ(Silver Rose)」の代表、イリーナ・マスロワ(Irina Maslova)さんは、W杯観戦に訪れる多数のサッカーファンが買春を楽しみにしているという衝撃的な報道がある一方で、警察の取り締まりによって、違法な性産業に従事する人々の大多数はW杯期間中、商売できないだろうと話す。「警察の通告で、大半の売春宿は素直に店を閉めようとしているし、営業する店はリスクを負うことになる」

 通常通り営業できるのは、「クリシャ」(ロシア語で「屋根」の意)と呼ばれる「用心棒」の役割を果たしてもらう見返りとして、売り上げのうち一定の割合を当局者や警察に払っている売春施設だけとなるだろう。

 試合が開催される11都市の一つであるサンクトペテルブルク(St. Petersburg)。この街にある「サロン」で働くマリアさんはAFPの取材に対し、最近いくつかのサロンが店を畳んだと聞いたと語った。おそらく当局との話し合いがまとまらなかったためだろうという。

 ロシアは1990年代、性産業が盛んなことで有名だった。ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領も、ロシアの売春婦は「世界一」だと述べたことがあるほどだ。しかし近年は取り締まりが進み、セックスワーカーたちの報告によれば、需要が減り、2014年のロシア金融危機以降は料金の大幅な引き下げを余儀なくされているという。

 ロシア政府がW杯期間中、可能な限りクリーンなイメージを演出しようと努める中、「国のすべての機関とその関係者が、法律違反者や有害分子に対する締め付けを強化するはずだ」とマスロワさんは語る。

 マスロワさんによると、2014年のソチ冬季五輪など過去の国際イベント時には、セックスワーカーに科される警察の罰金がつり上げられ、大会期間中ずっと勾留されていたこともあった。