【6月11日 AFP】中米グアテマラ、フエゴ(Fuego)山に近い街、エスクイントラ(Escuintla)。仮設の遺体安置所では、苦渋に満ちた表情で愛する人の写真を握りしめた人々が、行方不明者を見つけて埋葬したいと願いながら立ちつくしている。

 フエゴ山噴火による死者数は、公式発表で少なくとも110人。多数が行方不明になっており、約4500人が家屋を失った。

 火山灰に覆われ壊滅状態となった村、サンミゲルロスロテス(San Miguel Los Lotes)で遺体十数体を収容したボリス・ロドリゲスさん(24)は「彼らは動物じゃない、人間だ」と語った。他の遺族らと同じくロドリゲスさんも、仮設の遺体収容所に安置されている遺体が家族の元に戻ることを待ち望んでいる。

 首都グアテマラ市(Guatemala City)の南西約35キロに位置するこの小さな村は、3日に発生したフエゴ山噴火による土砂、火山灰、溶岩に埋もれて地図上からほぼ消滅してしまった。

 住民の多くは、防災当局が正しいタイミングで避難警告を発令していれば、このような悲劇は起きなかったと述べている。災害の知らせを受け、26年間住んでいる米国から急きょ、最初に搭乗できた便で一時帰国したエンマ・パマルさん(46)も、そのように主張している。サンミゲルロスロテスで生まれ育ったエンマさんは、今回の火山噴火で親戚18人を失った。

 生き残った弟のジェルソンさん(27)と共に立っていたエンマさんは、遺体の身元確認が長期化する中、「希望はもとより忍耐を失いそうだ」と述べた。

 遺体安置所には現地学校の生徒たちの写真が載ったポスターを持って待つ教師のミルビア・ロサレスさん(50)の姿もあった。噴火後およそ50人の生徒が死亡したか、もしくは行方不明になっているという。ロサレスさんは安置所内の端から端へと歩き回って生徒を捜し、「とても悲しい」「生徒に会わなければ」と言って涙をこらえた。(c)AFP/Henry MORALES