【6月11日 AFP】全仏オープンテニス(French Open 2018)は10日、男子シングルス決勝が行われ、大会第1シードのラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)は6-4、6-3、6-2のストレートで第7シードのドミニク・ティエム(Dominic Thiem、オーストリア)を退け、通算11回目の大会制覇を果たした。ナダルは四大大会(グランドスラム)の優勝回数を17回に伸ばし、男子シングルスでは史上最多となるロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)の20勝まであと3勝に迫った。

 しかし、32歳のナダルはグランドスラムを計9回欠場するなど、これまで何度も故障に悩まされており、フェデラーの数字を目標にはしていないと慎重な姿勢を示し、「そういうものに必死になったことは一度もない」と明かした。ツアー通算79勝を挙げ、1億ドル(約110億円)以上の賞金を稼ぎ出し、来年の全仏出場とV12を目指してはいるものの、将来については今まで通りどこか達観したような見方をしている。

 ナダルは今季もけがと無縁ではなく、1月の全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament 2018)では準々決勝で途中棄権を強いられ、北米でのハードコートシーズンはスキップすると、復帰は欧州でのクレーコートシーズンが始まってからだった。この日の決勝も血流と関係していると言われる指のつりで第3セットにプレーを中断する場面があり、本人も「怖さがあった」と認めている。

「誰かが自分より稼いでいるとか、自分より大きな家を持っているとか、自分よりグランドスラムを多く取っているなど、そういうことを不満に感じていたら体が持たないよ。そうした感情を抱えながら生きていくことはできない。いつかロジャーのように20勝したり、それ以上勝てれば最高だけど、それは考えていない」

「年齢や時間に打ち勝つのは不可能だ。時計の針は進み続ける。そういうものだ。もし7年か8年前に、あなたは32歳でまたトロフィーを掲げていると誰かから言われたとしても、そんなことはあり得ないと答えていただろう。だけど僕はここにいる。だから将来のことは心配していない。テニスは間違いなく僕の人生の大切な一部だが、すべてではない」

■芝のシーズンに向けては「まずは感触のチェックから」

 ナダルは今後、2008年と2010年に優勝したウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2018)に向けた戦いに入るが、このところのオールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ(AELTC)での戦績は思わしくなく、前回大会は第5セットが15-13というスコアになる激闘の末、ギル・ミュラー(Gilles Muller、ルクセンブルク)に敗れてベスト16敗退に終わった。

 ナダルは「できる限りたくさん出場したいと思っているが、これから数日は感触をチェックしなくてはならないことをわかってほしい」と話し、3週間後に迫ったウィンブルドン開幕に向けて、準備の進め方を検討している様子をうかがわせた。

 次週開催されるフィーバーツリー選手権(Fever-Tree Championships 2018)にエントリーしているナダルは、「土と芝の違いは非常に大きい。若いころは大会に連続で出ていたから変化に対応できたけれど、今は感触をチェックするために数日かかる」と話している。

 オープン化以後の男子テニスで、30代でグランドスラムを3回以上勝った選手は、フェデラー、ロッド・レーバー(Rod Laver)氏、ケン・ローズウォール(Ken Rosewall)氏、そして今回のナダルの4人しかいない。

 50年前に大会を制し、この日は客席から決勝を見つめたローズウォール氏は「彼と同じ時代にプレーしていなくて良かったよ」と話し、ナダルの実力に脱帽している様子だった。(c)AFP/Dave JAMES