■「宇宙をインスパイアする」

 USECSでサフィ君は「ナンハ・プロフェッサー」、つまり「小さな先生」として扱われている。この秘蔵っ子はいつかすごいことを成し遂げるに違いないが、大学が彼に何を期待しているのかはまだ漠然としている。

 サフィ君は普通の学校に通いつつ、同時にこの大学で英語の授業を受けていた。アンマー・ソハイル(Ammer Sohail)学長によると、サフィ君が持つ「目を見張るような自信」に皆が気づくのに時間はかからなかったという。

 ほどなくしてサフィ君はUSECSのフルタイムの学生となり、英語の勉強を続けながらモチベーショナルスピーカーとしてのキャリアを踏み出した。今では毎週、サフィ君のスピーチに学生たちが集まり、インターネット上でのファンもどんどん増えている。

 この大学の学生の多くは労働者階級出身だ。学長は、サフィ君の「仕事」は貧困層の学生たちを励まし、教育格差が激しいこの国に住む彼らに「希望を与え、ガラスの天井を破れる」ように鼓舞することだと語った。国連(UN)によると、パキスタン国民の非識字率は40パーセントにも上る。「教育の重要性を、国全体に啓蒙したいのです」

 サフィ君の父親で裕福なビジネスマン、アブドゥル・レーマン・カーン(Abdul Rehman Khan)さんも全面的に支援している。「彼は普通の子どもではありません。会う人たちはこの子に特別なものを見いだします。私から見ても才能があります。ですから、彼には特別な教師たちを手配しています。いつか、並外れた指導者になってほしいのです。とても誇りに思っています。彼の才能と知能は、まさに神の贈り物です」

 サフィ君もその横で父親に同意するが、その言葉は時に暗記したセリフのようにも聞こえた。「僕はインスピレーションなんです。パキスタンだけでなく、世界を感動させる。僕は宇宙をもインスパイアできる」。サフィ君は記者に向かってまばたきひとつせず言ってみせた。