背が高く端正な容姿の安琦さんは、一夜にしてスターに。ファンの間では、「天使」と呼ぶ人さえいた。

 21歳のラッキーボーイは、中国国内リーグ戦で大連実徳(Dalian Shide)の勝利に貢献しただけでなく、中国代表として02年W杯の代表メンバーにも選ばれた。W杯で出場機会はなかったが、前途は希望に満ちているはずだった。

 しかし、ファンの期待に応えられるような守護神にはなれなかった。04年、「黄金世代」で編成された五輪の中国代表チーム予選試合に、安琦さんの姿はなかった。ファン々は驚きを隠せなかったが、安琦さんのプロとしての生涯は下降線をたどり始めていたのだ。

 翌年、安琦さんは所属していた大連実徳チームを離れ、2部リーグの大連長波(Dalian Changbo)に移籍。当時の2部リーグの初戦で、大連長波は0-9で長春亜泰(Changchun Yatai)に完敗。試合後、ゴールを守りきれなかったとしてファンの非難の的になった。

「あのサッカー場は、とてもプレーできるような状態ではなく、グラウンドは全て凍っていたんだ」。サッカー誌の2年前のインタビューで、悪夢のような試合だったと振り返っている。「靴をスニーカーに履きかえて試合に臨んだ。審判も暗黙の了解だったよ」と笑いながら語っていた。

 チームは当時、グラウンドの状態が分からなかった上、対戦相手は滑り止めのスパイクシューズを履いていたという。試合中、相手チームの選手が急に止まると、自陣のチームメイトが滑って広告の看板にぶつかってしまった。

■警察沙汰の事件、十字じん帯切断

 05年には、どん底に突き落とされる事件があった。南京(Nanjing)での試合に参加する際、あるクラブのホステスが、個室の中で安琦さんに暴行されたと警察に通報。警察で12時間の取り調べを受けた。「強姦未遂」の事実は確認されなかったが、ただちに南京を離れるよう勧告された。疑惑に満ちた事件ではあったが、安琦さんのプロ人生が、ますます転落していくのを止めるすべはなかった。

 その後、一度は復帰の兆しを取り戻したが、08年に十字じん帯を切断。プロ選手としてのキャリアは完全に終わってしまった。心身ともに疲れ切った元中国代表のGKは10年、ひっそりと現役を引退した。

 サッカーから離れた後、安琦さんは過去ときっぱり決別をした。

 友人と共に、サクランボの販売を始めた。大連にサクランボ農園を所有し、あるメディアの報道によると、農園の年間生産量は100トンを超えている。

 こうした現在の安琦さんに、ネットユーザーは次々と「いいね!」を押した。「自力で生計を立てる生活は、不労所得より素晴らしい」といったコメントだった。(c)東方新報/AFPBB News