■「記憶の政策、180度転換」を叫ぶ極右政党

 1992年からリービッヒ中等学校で歴史を教えているステファン・ペータースさんは、「ホロコーストと第2次世界大戦から遠く離れるにつれ、それを伝える新たな方法を見つけることがより差し迫った課題となっている」と話す。

 戦後何十年と続いた沈黙と抑圧された記憶からドイツが解放され、ナチスの過去を語り始めたのは20世紀後半のことだ。

 しかし昨年は、連邦議会選挙で極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が得票率12.6%と躍進。2015年以降、主にイスラム教徒の難民100万人以上がドイツに押し寄せていることが、AfD台頭の追い風になった。

 選挙に先立ち、AfDの中部テューリンゲン(Thuringia)州代表のビョルン・ヘッケ(Bjoern Hoecke)氏は演説で「記憶に関する政策を180度転換させる必要がある」と呼び掛けた。

 AfDが「記憶の文化」を軽視するのは、ユダヤ人に対する憎悪からというよりも、戦後のドイツが歴史から得た多くの教訓を否定していることにある。

 一方で国内の約20万人のユダヤ人らは、抗議デモでイスラエル国旗が燃やされることや路上での暴力行為、学校でのいじめなど、イスラム教徒による反ユダヤ主義に基づく犯罪が増加していることに不安を覚えている。