【6月16日 AFP】7年に及ぶ内戦と大規模な避難や移動によって、シリアの人口マップに大きな変化が起きている。国内の民族間、宗教間、政治派閥間別に消し難い境界が生じている。

 避難民やアナリスト、人権活動家らはAFPの取材に対し、分裂した国土の中で反体制派は追放され、少数派は互いに寄り集まるようにして暮らし、それぞれのコミュニティーは以前よりも同質化していると述べている。約1100万人ものシリア人が国内外に避難し、帰郷がかなうか否か分からない状況下で、人口分布の再編は今後も続くだろうと彼らは言う。

 反体制派の戦闘員だったスンニ派教徒のアブ・ムサブ・ムカサルさん(25)は、生まれ故郷のホムス(Homs)の街へ帰還することはないかもしれないと考えている。ホムスは現在、シリア軍に完全に掌握されている。「政権側の支配地には二度と戻れないかもしれないし、アラウィ派(Alawite)の教徒とは二度と隣り合って住めないかもしれない」。アラウィ派はイスラム教シーア派の少数派ながら、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領が属する宗派だ。

 シリアではアラウィ派のアサド家が率いる少数派政権が、数十年にわたって多数派のスンニ派を支配してきたが、国内の亀裂は以前よりもいっそう増しているとムカサルさんは言う。「もちろん、自分の息子にはすべてを語るつもりだから、私たちにこんな仕打ちを与えた彼らを息子も憎悪するようになるだろう」。インターネット上のメッセージング・プラットフォームで接触したムカサルさんはそう述べた。

 5月末にムカサルさん一家がバスでたどり着いたイドリブ(Idlib)県は、アサド政権が奪還した地域から移動してきたスンニ派の反体制派戦闘員とその家族ら数十万人のかけこみ先となっている。ムカサルさんは「気づかないうちに人口分布は変化した。この国は分裂してしまった」と語った。