【6月7日 AFP】黒い顎ひげと巻き髪、それにサッカーのユニホーム。イラク人FWのフセイン・アリ(Hussein Ali)は世界のトッププレーヤーの一人と間違われることがしばしばだ。その選手とは、エジプトの英雄モハメド・サラー(Mohamed Salah)だ。

 イラクの首都バグダッドで、20歳のアリは一緒に写真を撮りたいという人たちによく足を止められている。アリ自身はアルザウラーSC(Al-Zawraa SC)というクラブでプレーするFWだが、イラクの人々の興味をそそるのは外見がサラーと驚くほど似ているという点だ。

 アリを指導するコーチのアドナン・モハンマド(Adnan Mohammad)は「最初のトレーニングで、彼は『フセイン・アリです』と自己紹介したんだ。けれど私は『いや、違うよ。君はモハメド・サラーだ』と言ったのさ」と明かした。

 サラーがまだイタリア・セリエAのASローマ(AS Roma)でプレーしていたころ、アリは自分がサラーに似ていることを認識していたが、その意見を冗談だと受け止めていた。

 しかし、サラーがイングランド・プレミアリーグで全世界的な名声を得て、アリ曰く「アラブ界一のサッカー選手」になると、まるでドッペルゲンガーのようなアリは自身の姿について本気で考えるようになった。

 それ以来、サラーがプレーしているリバプール(Liverpool FC)の赤いユニホームを着用するようになったアリは、「公式メーカーで購入した本物のシャツさ」と誇らしげに話す。

 最近では「イラクのモハメド・サラー」が家を出るときには記念撮影のために足を止められ、サラーと勘違いしたサッカーファンが近づいてくるようになった。

「おとといはショッピングセンターに行ったんだけど、警備員、販売員、そしてお客さんの全員が私と写真を撮りたがっていた。もちろん若い女性もね!」

 先月、アリは繁華街で活動するサポーターグループに加わり、サラーが所属するリバプールとレアル・マドリード(Real Madrid)による欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2017-18)の決勝戦を観戦した。

「サラーがけがしたとき、まるで僕がけがをしたのだと思ったかのように、僕のことを見に来た人もいたよ」

 サラーの負傷後、世界中のファンが今月14日に開幕する2018年W杯ロシア大会(2018 World Cup)に自分たちの英雄であるサラーが出場できるかどうかもどかしい気持ちだった。

 結局サラーはエジプト代表のW杯に臨む登録メンバーに名を連ね、エジプト国民はサラーがロシアでも得点記録を伸ばし続けることを期待している。

 アリの願いは、いつか彼自身のヒーローと対面を果たすことだ。

「夢はモハメド・サラーに会うこと。もしかしたら、彼がロシアでのW杯に招待してくれるかもしれないだろ?」 (c)AFP