【6月7日 AFP】ベトナムのマングローブはポリ袋をまとい、タイの海ではプラスチック製の袋をのみ込んだクジラが死に、インドネシアの「楽園」の島々の海中はごみであふれている。プラスチック汚染のゾッとするような光景がアジアに広がっている。

 毎年、世界の海洋に約800万トンのプラスチックごみが流れ込んでいる。これは、毎日毎秒ごみ収集車1台分のプラスチックが捨てられているのに等しい。海洋保護団体オーシャン・コンサーバンシー(Ocean Conservancy)の2015年の報告書によると、ごみの半数以上はアジアの5か国――中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムから排出されているという。

 これらの国々は世界最大のプラスチック生産国、消費国、廃棄国だ。アジアの中で経済が急速に発展している国々でもあるが、廃棄物が適切に処理されていない国がほとんどで、処理されていたとしても不完全だ。

 5日の世界環境デー(World Environment Day)は、「再利用できないなら使わない」のスローガンのもと、危機的な状況にあるプラスチック汚染に焦点を当てた。

 だが、美観的な問題だけではない。プラスチックは海洋生物を殺している。

 タイ南部で先週、死んだクジラの胃からプラスチック製の袋80枚が見つかった。プラスチック製品を食べて死んだ海鳥やカメが浜に打ち上げられる光景は、見慣れたものとなりつつある。

■見えない脅威

 専門家は、最大の脅威は目に見えていないと警告する。

 マイクロプラスチックは、大きなプラスチックが壊れて細かくなった微小のプラスチックのかけらで、有害物質を吸収しやすい。このマイクロプラスチックが水道水、地下水、アジアの何百万もの人々が毎日食べる魚の体内から発見されている。

 科学者は、マイクロプラスチックの摂取が健康にどのような影響を与えるのか、まだ完全には把握していない。「どこへ向かっているのか全くわからない実験を、全世界で行っている」と、国際自然保護連合(IUCN)の世界海洋・極地プログラム部門の責任者カール・グスタフ・ルンディン(Carl Gustaf Lundin)氏はAFPに語った。