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【6月6日 AFP】飼育下で誕生した世界初のクロクスクス(学名:Ailurops ursinus)が、ポーランドの動物園ですくすくと成長している。だが飼育員らの話によると、この希少な小型有袋類の赤ちゃんが生まれていたことには、母親の腹部にある育児嚢(いくじのう)が動き始めるまで誰も気づかなかったという。

 ポーランド南東部にあるブロツワフ動物園(Wroclaw Zoo)のラドスワフ・ラタイシュチャク(Radoslaw Ratajszczak)園長は5日、AFPの電話取材に「気づいた時点では生まれてから数週間か、あるいは数か月たっていたはず。雌の育児嚢の中で何かが動いているのに飼育員が気づき、その後、袋から飛び出たしっぽを確認した」と語った。

 また、「この種の子どもが飼育下で誕生したのは今回が初めて」と、インドネシア・スラウェシ(Sulawesi)島原産のクロクスクスについて説明し、同島の野生生息地では、狩猟と森林破壊によってその生存が脅かされているともした。

 今回の赤ちゃんは6か月前に「小粒の豆」ほどの大きさで生まれた可能性が高いとされ、現在は体ももっと大きくなり、しばしば母親の育児嚢から出て動き回っているという。

 だが、動物園の飼育員らは赤ちゃんを本当に間近で見る機会がまだ得られていない。「性別がまだ分からないので名前はまだ付けていない」とラタイシュチャク園長は話した。

 どことなくコアラをほうふつとさせるクロクスクスの生態に関しては、その詳細がほとんど分かっていない。スラウェシ島では生息地の森林の縮小が加速する中で地元住民による狩猟によって絶滅寸前の危機に追い込まれている。

「この種の生態については繁殖習性や野生の個体数など何も分からないに等しい。野生での調査がこれまで全く行われていないからだ」と話すラタイシュチャク園長。過去には、スラウェシ島に滞在し、クロクスクスの生態のより詳細な解明を試みたことがあるという。