【6月6日 AFP】男子テニスの元世界ランキング1位で、四大大会(グランドスラム)優勝12回を誇るノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)が、かつてないキャリアの危機に直面している。開催中の全仏オープンテニス(French Open 2018)男子シングルス準々決勝で、無名のマルコ・チェッキナート(Marco Cecchinato)に敗れたジョコビッチは、レベルの高いプレーを取り戻し、気持ちをもう一度奮い立たせるために、ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2018)を欠場することも考えている。

 31歳のジョコビッチは5日、今大会が始まるまでグランドスラムで1勝もしたことがなかったチェッキナートに3-6、6-7(4-7)、6-1、6-7(11-13)で敗れた。チェッキナートは世界ランキング72位で、ジョコビッチが同選手より低いランクの選手にグランドスラムで負けたのは、78位のマラト・サフィン(Marat Safin)に敗れた2008年のウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2008)と、117位のデニス・イストミン(Denis Istomin)に敗れた2017年の全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament 2017)の2回しかない。

 今回の敗戦はジョコビッチにとっても相当にショックだったようで、試合後の会見の場所には、すでに鍵を閉めていた小さな部屋を指定し、多数のカメラを向けられることをいやがった。そして「芝でプレーするかはわからない。今はテニスのことはまったく考えられない」と話し、来るグラス(芝)コートシーズンを休養に充て、その過程でウィンブルドンを欠場する可能性もほのめかした。

 ジョコビッチが特に不満に感じているのは、チェッキナート戦の負け方だった。メディカルタイムアウトを2回要請し、首と右脚を治療しなければならなかったこともそうだが、この日のジョコビッチはチャンスに次ぐチャンスを潰した。第2セットの第12ゲームでは3本のセットポイントをふいにし、第4セットの第6ゲームでは3本のブレークポイントを決めきれず、第9ゲームでも2セットオールに持ち込むチャンスを逃した。

 その後のタイブレークでも3本のセットポイントを獲得しながら決められず、最後の3本目では、無様に浮いたフォアハンドのショットがパリの夕空に消えていった。

 現在のジョコビッチは、長く続いた肘のけがとコンディション不良の影響で、世界ランキングをここ12年で自身最低となる22位まで落としている。2017年はツアーわずか2勝と、2015年の11勝、2016年の7勝から数を減らし、迎えた2018年も不安定なシーズンを送っている。

 全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament 2018)では、世界58位(当時、以下同)のチョン・ヒョン(Hyeon Chung)に敗れて4回戦敗退。BNPパリバ・オープン(BNP Paribas Open 2018)では109位のダニエル太郎(Taro Daniel)、マイアミ・オープン(Miami Open 2018)では47位のブノワ・ペール(Benoit Paire、フランス)、そしてバルセロナ・オープン(Barcelona Open Banc Sabadell 2018)では、大会で快進撃を見せた140位のマーティン・クリザン(Martin Klizan、スロバキア)に敗れた。

 それでもイタリア国際(Internazionali BNL d'Italia 2018)では、ラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)になすすべなく敗れたものの、準決勝まで勝ち上がり、復活の兆しを見せていたかに思えた。

 ジョコビッチは会見で「難しい。人生には難しいことがたくさんある」と話した。

「グランドスラムでの敗戦は、どんなときもこたえるものだ。特に、何か月もの助走期間がある大会ではね。それに少なくとも、もう一つ上まで行くチャンスは十分にあると思っていたが、そうはならなかった。それが現実だ」 (c)AFP/Dave JAMES