【6月1日 AFP】ドイツで初となる旧式ディーゼル車の通行禁止措置が5月31日、北部ハンブルクの一部道路で施行された。ほぼ象徴的な措置だが、自動車メーカーやドイツ政府は規制に後ろ向きだ。

 今回規制が導入されたのはハンブルク市内の2本の幹線道路のうち、それぞれ1600メートル、580メートルにわたる区間で、欧州連合(EU)の排ガス規制「ユーロ6(Euro-6)」を満たさないディーゼル車の通行を禁止する標識が新たに設置された。

 連邦行政裁判所が2月、EUの排ガス規制を達成するため地方自治体が大気汚染対策としてディーゼル車の通行を禁じるのは合法と判断したことを受けて実現したもの。

 ただ、ハンブルク市の措置には国内から懐疑的な声も上がっている。独週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)は、「象徴的な政治駆け引きだ。規制された道路は2本だけで、影響が及ぶのもハンブルク市内に住む180万人のうち、わずか1787人にすぎない」と指摘。大気汚染対策を行っているとEUにアピールするための措置でしかないとの見方を示した。

 とはいえ、国内各都市が追随すれば、ドイツの自動車産業は再編を余儀なくされかねず、雇用への影響も懸念されることから、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)政権はディーゼル規制の行方を慎重に見守っている。既に南部シュツットガルトや北部キールは独自のディーゼル規制を検討中で、ミュンヘン、ケルン、デュッセルドルフもハンブルクの試みを注視している。

 ドイツでは、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が排ガス試験で不正を可能にするソフトウエアを1100万台に搭載していたことが発覚し、ディーゼル業界への風当たりが強まっている。

 ハンブルク市の環境対策担当者イェンス・ケルスタン(Jens Kerstan)氏は、今回の措置が「罪なき自動車オーナー」に迷惑を掛ける可能性を認めつつ、「自動車メーカーが国民をだまし、政府が何年も対策を取ろうとしてこなかった以上、避けられない措置だった」と主張した。(c)AFP