■育て方は一つではない

 オスター氏は決して「正しい」とか「誤っている」とは言わない。その代わりに「証拠がない」という言葉をよく使う。確実な答えを探し求めている親たちには、じれったい結論かもしれない。

 2019年4月に出版予定のオスター氏の次の著書は、1歳~3歳児の子育てに焦点を当てている。この本でも何かを提案したり、安心感を与えたりはしていない。

 例えば世界保健機関(WHO)は、子どもの知的発達に好影響をもたらし、また肥満リスクを抑制するとして母乳での育児を奨励している。米国では可能な限り母乳で育てることが推奨されている。だが、オスカー氏はこれにも疑問を呈している。

 同氏がこれまで調査した中で、十分に大きな規模で無作為に分けられた2グループの女性たちを比較した厳密な研究は、1990年代にベラルーシで行われた研究のみだったという。その研究では、一方のグループは母乳での育児を推奨されていたが、もう一方はそうではなかった。

 多くの研究では、母乳で育った子どもとそうでない子どもの知能指数(IQ)を比較している。だが、母乳で育児をしている女性は裕福で学歴がより高いことがしばしばで、その人自身のIQも高い傾向があり、このことは結果に差をもたらし得る。

「問題は、そうした研究結果が基づいている証拠自体が、母乳で育児をしている女性とそうでない女性には差があるという事実によって深刻にバイアスをかけられていることが多い点だ」「母乳での育児率は、世帯収入、学歴、人種などによって大きく異なる」とオスカー氏は言う。さらに、母乳の影響を本当に明らかにしようと思ったら、2つの比較対象群を無作為に分けるランダム化比較試験が必要だという。

 オスカー氏の著作では、乳幼児の睡眠問題からワクチン接種、しつけの方法、さまざまな教育観、さらにはカップルの関係に子どもが及ぼす影響まで扱われている。「家族の好みや都合がさまざまな選択に影響するということが、まさに明らかになっている」「ある人たちにとってはうまくいくことが、他の人にはうまくいかない。方法は一つではないのです」と同氏は述べている。(c)AFP/Ivan Couronne