【5月31日 AFP】子どもを誘拐し売り飛ばしているとの疑いをかけられた無関係の人々が、怒った群衆から暴行を受け死亡する事件がインドで相次いでいる。死者は既に6人に上り、警察当局は29日、ソーシャルメディア上のうわさを真に受けないよう市民に注意を呼び掛けた。

 警察の注意喚起の直接のきっかけは、南部ハイデラバード(Hyderabad)で先週末、子どもを食い物にする人身売買組織のメンバーとみなされた4人が群衆から集団暴行された事件だ。トランスジェンダー(性別越境者)の女性(52)が病院で死亡、3人が重傷を負ったが、警察によればそのような犯罪組織は実在しない。

 インド南部では、ソーシャルメディア上に根強く流布している児童売買組織をめぐるデマを信じた人々による集団リンチが続発。ハイデラバードから約160キロ離れたニザマバード(Nizamabad)地区でも先週、児童誘拐犯との言い掛かりを付けられた男性(42)が群衆に撲殺される事件が起きた。ハイデラバードの事件の被害者は、今月に入って6人目の死者だ。

「ハイデラバードに人身売買組織は存在しない」と、同市警察トップのアンジャニ・クマル(Anjani Kumar)氏は29日、AFPに語った。「ソーシャルメディア上のうわさを根拠に、他人に危害を加えないよう市民に警告している」

 28日には、警察官たちが「うわさを信じるな」と声を上げてハイデラバード市内を行進し、「私刑」を下さないよう人々に呼び掛けた。

 トランスジェンダー女性の殺害事件では、リンチに関与したとして35人を警察が逮捕。当局は、事件が起きたテランガナ(Telangana)州と近隣のアンドラプラデシュ(Andhra Pradesh)州、タミルナド(Tamil Nadu)州で市民に注意喚起を行った。これらの州では今月、同じうわさを根拠に自警団が合わせて4人を殺害している。

 警察によると、集団リンチ被害者の多くは「よそ者」だという。

 メッセージサービス「ワッツアップ(WhatsApp)」などのソーシャルメディアでは、男たちが屋外に子どもをつるしたり、幼児の四肢を切断したりする場面を映した動画が拡散されている。だが、警察ではこの動画に関連した児童誘拐事件を一件も確認できていない。これまでに、問題の動画を拡散したとして十数人が警察に逮捕されている。(c)AFP