【5月29日 AFP】人工知能(AI)と皮膚科医が正確かつ迅速に皮膚がんを発見する対決を行ったところ、AIに軍配が上がったとする研究論文が29日、英医学誌「Annals of Oncology(腫瘍学年報)」に掲載された。

 ドイツ、米国、フランスの研究チームはディープラーニング(深層学習)の一種である畳み込みニューラルネットワークというAIを使ったシステムに10万枚以上の画像を示し、皮膚の病変が良性か悪性か識別できるよう学習させ、17か国の皮膚科医58人と競い合う形でメラノーマ(悪性黒色腫)か良性のほくろかを識別する画像テストを実施した。

 結果、画像から正確に皮膚がんと診断できた割合は皮膚科医が平均で86.6%だったのに対し、AIのシステムは95%に達し、研究チームによると「畳み込みニューラルネットワークがほとんどの皮膚科医をしのいだ」という。

 テストに参加した皮膚科医の大半は5年以上の経験を持つベテランで、他は19%が経験2~5年、29%が経験2年未満だった。

 論文の第一著者であるハイデルベルク大学(Heidelberg University)のホルガー・ヘンスル(Holger Haenssle)氏は、「畳み込みニューラルネットワークが見落としたメラノーマの数は少なく、皮膚科医より検知能力が高いということになる」と指摘。また「良性のほくろをメラノーマと誤って診断することも少なかった」といい、「不必要な手術を減らすことにつながるかもしれない」との考えを示した。

 ただ、患者や皮膚の病変に関する情報をさらに与えると皮膚科医の診断結果も向上したといい、AIは皮膚がんをより早く、かつ簡単に診断し、手術による早期の除去を可能にする便利な技術となり得ると研究チームは結論付けている。

 研究チームによると、世界各国で年間およそ23万2000人がメラノーマを発症し、死者は5万5500人に上るという。(c)AFP