【5月27日 AFP】サッカー欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2017-18)決勝のレアル・マドリード(Real Madrid)対リバプール(Liverpool FC)戦を放送していたエジプト・カイロのカフェは、リバプールの同国代表、モハメド・サラー(Mohamed Salah)が前半途中に負傷交代すると、ファンたちの怒りと悲しみで満たされた。それでも彼らの多くは、リバプールを応援したのはサラーがいるからだと話し、すぐにレアルの応援にまわっている。

 カイロの街がイスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」の装いに包まれ、繁華街にランタンや色とりどりのランプの明かりがともる中、店には日没とともに断食を終えた人々が少しずつ訪れ、席が埋まっていく。サラーの顔が壁に描かれた露天のカフェ、ザフレト・アルブスタン(Zahret el-Boustan、庭園の花の意)はサッカーファンにはおなじみの店だが、この日はいつも以上に盛況だった。

 試合を中継している巨大画面にサラーの顔が映るたび、お客たちは興奮した叫び声を上げる。しかし彼らの喜びは長く続かなかった。「王」とも呼ばれるサラーがセルヒオ・ラモス(Sergio Ramos)ともつれあって倒れた際に肩を痛め、前半31分に交代を強いられたからだ。

 婚約者とともに店を訪れていた若いエンジニアの男性は「サラーは国民の息子だ。彼に何かが起こるところを見るのは誰だって悲しい」と話した。男性は基本的にはレアルファンだそうだが、サラーのことがあっただけに、チームが優勝した後も喜び半分だった。

 リバプールでチーム得点王のサラーが涙とともにピッチを後にすると、ファンたちも同じように涙を流し、中にはショックからラモスに罵声を浴びせる人もいた。ところが気持ちが落ち着くと、彼らの多くはレアルの応援にまわった。レアルとFCバルセロナ(FC Barcelona)の2クラブは、エジプトでも抜群の人気を誇っている。

 旅行会社で働いているという男性は、「リバプールを応援していた理由はただ一つ、サラーがいるからだ」と話した。レアルのスター、クリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)のユニホームを着て訪れた強者のファンもいたが、こちらの男性は誇らしそうな笑顔を見せながらも、まわりを怒らせるのが怖いからコメントはやめておくよと言って笑い声をあげた。(c)AFP