【5月29日 AFP】極小マイクロチップは米粒ほどの大きさながら、日常生活の多くの場面で必要となる重要なデータを格納することができる。皮膚の下に埋め込まれた極小マイクロチップがあれば、鍵やクレジットカード、電車の切符などを携帯する手間もなくなるだろう。

 一部の人々にとってみれば、これは英作家ジョージ・オーウェル(George Orwell)が描いた監視社会的な悪夢に聞こえるかもしれないが、スウェーデンでは個人情報漏えいのリスクよりも便利さを好む人々が増えており、歓迎される現実となっている。

 移植用の極小マイクロチップは、スウェーデンでは2015年に初めて使用された。当初そのことは公にされていなかった。

 だが最新技術に敏感で、個人情報の共有が透明性の高い社会の証しとして支持されている同国では、使用をめぐる問題についての議論が十分にされないまま、マイクロチップの移植が非常に積極的に進められている。

 ウルリカ・セルシング(Ulrika Celsing)さん(28)は新しいライフスタイルを試すため、手にマイクロチップを埋め込んだスウェーデン国民3000人のうちの一人だ。職場のメディアエージェンシー「マインドシェア(Mindshare)」に出勤する際には、小さい箱に手をかざし、暗証番号を入力するだけで扉を開けることができる。

 セルシングさんは、AFPの取材に対し「新しいものを試し、それを使えば生活はもっと便利になるかもしれないと思うのは楽しい」と話した。

■情報の共有

 スウェーデンでは、個人情報の共有は古くから存在し、そのことが、国民1000万人の間にマイクロチップを受け入れやすい土壌を形成する一因となっているのかもしれない。

 国民は社会保障制度やその他、行政機関に登録された個人情報の共有を長年受け入れている。だがその一方で、税務当局に電話で問い合わせるだけで他人の給与額を知ることもできてしまう。