【5月24日 AFP】世界最高峰エベレスト(Mount Everest)の登山産業は、その最も重要なリソースの不足によって危機にさらされている。経験豊富なネパール人山岳ガイド「シェルパ」の不足だ。

 この20年間でエベレストの登山者数は2倍以上に増え、シェルパの供給が追いついていない。経験不足のガイドが使われることもあり、すでに惨事を招いている。

 ダワ・サンジ・シェルパ(Dawa Sange Sherpa)さん(20)が昨年、果たしたエベレスト登頂は彼自身にとっても、彼が同伴した登山者にとっても初めての体験だった。下山途中、寒さと酸素不足、疲労にやられた。

 頂上の真下で意識を失った2人は数時間後に発見されてどうにか生還したが、2人とも重度の凍傷を負い、サンジさんは手の指をすべて失った。エベレストでの短いキャリアが終わった。

 サンジさんを発見したベテランガイドのアン・ツェリン・ラマ(Ang Tshering Lama)さんはこう語った。「友人は私に『彼はもうだめだ』と言った。でも、かすかに脈があることに私は気付いた」。ラマさんは意識のないサンジさんをひきずるようにして下山し、他の人々がサンジさんの顧客を救助した。

■未熟なガイドに案内させるツアー会社

 サンジさんは当初、ガイドをするつもりはなく、様々な装備を登山ルートのキャンプに運搬する仕事をする予定だった。学校を卒業してガイドになる前に、若いシェルパの多くがやる仕事だ。しかし彼の雇い主であるネパール最大の登山ツアー会社「セブン・サミット・トレック(Seven Summit Treks)」が60人ものエベレスト登山客を抱えてしまい、ツアー料を払った人々を山頂に連れて行く者が必要になったのだ。

 同社代表のミンマ・シェルパ(Mingma Sherpa)さんは、サンジさんにはエベレスト登頂経験があり、ガイドになる準備ができていたと語った。だが、サンジさんは登頂したことはなかったと述べている。

 サンジさんのほか、昨年はエベレストで同社所属のシェルパ9人が救助されている。それでも、ミンマ・シェルパさんは問題はないと主張している。

 ベースキャンプ関係者によると、今年の登山シーズンはまだ始まったばかりだが、すでに同社のシェルパ4人が凍傷にかかったという。