【5月23日 時事通信社】ナチス・ドイツのゲッベルス宣伝相の秘書だった女性が103歳でインタビューに応じた記録映画「ゲッベルスと私」が6月、日本で公開される。オーストリアから来日したクリスティアン・クレーネス、フロリアン・ヴァイゲンザマー両監督が22日夜、東京都目黒区の東京大学で討論会に臨み「歴史の回顧として撮影を始めたが、編集を進めるうちに今と似ていると思った」(クレーネス監督)と指摘。ゲッベルスの大衆扇動はポピュリズム(大衆迎合主義)として今も生きていると警告した。

 説得が実り2014年に撮影に応じたブルンヒルデ・ポムゼルさんは、1942年から3年間、ゲッベルスの秘書だった。「政治に関心を持たず生きてきた。でも、それで救われた」と語る。42~43年、ミュンヘンでの反ナチス抵抗運動「白バラ」で逮捕され処刑された学生を思い起こし「かわいそうに。黙っていれば殺されなかった」と同情する。クレーネス監督は「命を懸けた抵抗への共感はなかった」と撮影時を振り返った。

 ポムゼルさんは17年、106歳で死去したが、亡くなる前、映画では語らなかった話として、ユダヤ人の恋人がいたことを監督たちに打ち明けている。ヴァイゲンザマー監督は「第2次大戦の開戦がなければアムステルダムへ行って、その恋人と結婚していたかもしれない。少しタイミングが違えば全く違う人生だったはずで、人間を簡単に断罪できない」と述べた。「ゲッベルスの秘書だった点が違うだけで、同じように生きたドイツ人は何百万人もいる」と強調した。(c)時事通信社