【5月22日 AFP】かつては広く生息していると考えられていた世界最大の両生類チュウゴクオオサンショウウオが現在、差し迫った絶滅の危機に直面しているとの研究論文が21日、米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された。高級食材とされるチュウゴクオオサンショウウオの違法な密猟や捕獲が横行していることが原因だという。

 チュウゴクオオサンショウウオの大きさは小型のワニほどで、体重は60キロ以上にもなる。論文の共同執筆者で、英ロンドン動物学会(ZSL)の研究者のサミュエル・ターベイ(Samuel Turvey)氏は、「この信じられないほど素晴らしい生き物を人間が食用にするために乱獲したことにより、驚くほど短期間のうちに野生の個体数に壊滅的な影響が及んだ」と指摘。

「組織的な保護対策を緊急に講じなければ、世界最大の両生類の未来は深刻な危機に直面する」と警鐘を鳴らす。

 研究チームは、チュウゴクオオサンショウウオが生息することが知られている河川域で、2013~2016年に大規模な調査を実施した。

 今回発表された論文によると、「どの調査対象地域でもチュウゴクオオサンショウウオの野生個体群の生存を確認できないため、この生物種が広大な調査対象地域全体で激減しているか、機能的絶滅(種として維持できないほどのレベルにまで個体数が減少していること)に陥っていると考えられる」という。

 中国は、チュウゴクオオサンショウウオを繁殖させて自然に帰す計画を実施しているが、今回の調査では、チュウゴクオオサンショウウオが目撃された数か所で、それらの個体が野生か養殖かを確認できなかった。

 論文は、「今回の現地調査と聞き取り調査で、チュウゴクオオサンショウウオが乱獲が原因とみられる広範囲の壊滅的な個体数減少に見舞われていることが示された」として、「野生個体群の状態は、われわれの調査データが示唆するよりもはるかに悪化している可能性がある。チュウゴクオオサンショウウオの個体が発見された2か所では、直前に養殖個体の放流が行われていた」と指摘している。

 また、研究チームの報告によると、これまで単一種と考えられていたチュウゴクオオサンショウウオは実際には少なくとも五つの別種に分けられるという。この5種はすべて急速に絶滅に向かっており、一部はすでに絶滅している可能性もある。

 さらに、中国が実施している繁殖と放流の取り組みは、チュウゴクオオサンショウウオの遺伝的差異を考慮していないため、十分な配慮が求められると、論文は指摘している。雑種を放流すると、それぞれの個体が個々の環境にうまく適応できず、生存できない可能性が高まる。

 中国科学院昆明動物学研究所(Kunming Institute of Zoology, Chinese Academy of Sciences)のジン・チェ(Jing Che)氏は、「チュウゴクオオサンショウウオに対する保護計画は早急に改定する必要がある」と述べている。(c)AFP