【5月21日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazi)の独裁者アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)が1945年にベルリンで死亡したことは間違いないとする研究論文がこのほど発表された。研究者らは、ロシアで保管されている歯を調べ、青酸カリと銃弾によって死亡した可能性が高いとの結論に至った。

 論文の共同執筆者で大学教授のフィリップ・シャルリエ(Philippe Charlie)氏(病理・法医学)は、AFPの取材に「歯はヒトラーのものに間違いなく、疑問の余地はない。ヒトラーは1945年に死亡したことが調査で裏付けられた」と明言。「ヒトラーをめぐる陰謀説には全て終止符を打つことができる。彼は潜水艦でアルゼンチンに逃亡していなかったし、南極や月の裏側の秘密基地への潜伏などあり得ない話だ」と語った。シャルリエ氏ら5人の専門家からなる研究チームの論文は、欧州内科学会の「European Journal of Internal Medicine」誌に掲載された。

 ロシアの連邦保安局(FSB)と国立公文書館は2017年3月と7月にヒトラーの遺骨の調査を許可した。調査の許可は1946年以来となった。シャルリエ氏によると、いくつかの虫歯やの義歯を調べたところ、白い歯石の付着が確認でき、また肉の繊維の痕跡はなかったという。ヒトラーはベジタリアンだった。

 ヒトラーのものとされる頭蓋骨の断片には、左側に銃弾が通過してできたとみられる穴があった。サンプル採取は許可されなかったものの、死の1年前に撮影されたヒトラーの頭蓋骨のレントゲン写真と断片が「酷似している」ことが分かった。

 一般的にヒトラーは、1945年4月30日にベルリン市内の地下壕で、愛人エバ・ブラウン(Eva Braun)とともに自殺したと考えられている。

 シャルリエ氏は、今回の研究によって死因を特定することが可能になるとしている。「これまで、自らの命を絶つために青酸カリを使ったのか、それとも銃で頭を打ち抜いたのかは不明だったが、おそらくその両方だったのだろう」

 歯の分析では火薬の痕跡が見つからなかった。これは銃を口にくわえて発砲していないことを示唆するものだ。おそらく首や額に向けて発砲されたのだろう。他方で、虫歯に青みがかった付着物を確認しており、青酸カリと義歯に含まれる金属の化学反応が起きたことが考えられる。

 シャルリエ氏は、防腐処理を施し布で包まれて埋葬されたリチャード1世(Richard Lionheart)の心臓の調査にも携わっている。(c)AFP