【5月20日 AFP】米国から1万キロ以上も離れたパキスタンに住むアブドゥル・アジズ(Abdul Aziz)さんは「ラマダン(Ramadan、イスラム教の断食月)」の日没後の食事中、米CNNのテレビ中継で17歳の娘が通う米テキサス州の高校で銃撃事件が起きたことを知った。

 事件発生直後でまだ混乱と恐怖が支配する状況の中、アジズさんはサビーカ・シェイク(Sabika Sheikh)さんの携帯電話に何度もかけた。だが、サビーカさんは出ない。

「ずっと娘にかけ続けた。『ワッツアップ(WhatsApp)』にメッセージも送った。娘が返信しないなんてことは、これまで一度もなかった」。アジズさんは涙をこらえながらAFPに語った。

 交換留学生として米テキサス州のサンタフェ高校(Santa Fe High School)に通っていたサビーカさんは、18日に発生した在学生による銃乱射事件で死亡した10人の生徒のうちの一人となった。

 アジズさん夫婦が南部カラチ(Karachi)の自宅でAFPの取材に応じたのは19日、夫婦が最も恐れていたサビーカさんの死亡が確認された数時間後だった。

 アジズさんは「まだ事実を受け入れられない。これはまるで悪夢だ」と語った。隣りに座ったアジズさんの妻は明らかにショック状態にあり、友人や親戚から慰めの言葉をかけられても応じられない状態だ。

 サビーカさんは10か月の留学期間をあと数週間で終えてパキスタンに帰国し、家族や親戚と共にラマダン明けを祝う祭り「イード・アル・フィトル(Eid al-Fitr)」を過ごすはずだった。アジズさんによれば、サビーカさんは常に成績優秀で将来はパキスタンの外務省で働くことを夢見ていたという。

 アジズさんは「一般的に米国での生活は安全で不安もないと思われている。だが娘の場合は違った」と語った。

 パキスタンではサンタフェ高校での銃乱射事件をめぐり、悲劇的な死をとげたサビーカさんを悼むとともに事件に恐怖感を覚えるとの声が高まっている。

 米国社会では相次ぐ学校での銃乱射事件に衝撃が走っている。3か月前にも米南部フロリダ州パークランド(Parkland)の高校で17人が射殺される事件が発生。これを機に生徒たちの主導で銃規制を求める草の根運動が広がった。(c)AFP/ Ashraf KHAN