【5月27日 AFP】「理想の男性」に心奪われることに憧れるフルードさん(24)。しかし、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が拠点都市としていたイラク・モスル(Mosul)の多くの若者と同じく、彼女もやはり結婚できないことへの不安を覚えているという。

「仕事も結婚相手も見つかってない…私の人生は家事ばかり」と大学を卒業したばかりのフルードさんはAFPの取材に語り、今後も実家から出られないのではとの気持ちが次第に強くなっていることを明らかにした。「37歳の姉には子どもが4人いる。私はまだ結婚相手が見つかるかもしれない。でも、29歳の妹はさらに希望がない」。そう言いながらフルードさんは口元に悲しい笑みを浮かべた。

 ISは2014年半ば、イラク第2の都市モスルを掌握して「首都」と呼んだ。それ以前のモスルは、伝統主義と保守主義のとりでだったことから、女性が結婚も婚約もしないで20代に突入することは珍しかった。

 モスルは昨年7月、イラク政府の下に奪還されたが、9か月間続いた激しい戦闘の傷は今も癒えていない。

■奪われた希望

 カフェテラスに集っていた男性の一人、ムメン・アブドラさん(38)も結婚を夢見ている。しかし「僕は経済学の学位を持っている。けれど、それは自分の夢をかなえる助けになっていない」とAFPの取材に述べた。彼もまた実家から出ていない。タクシー運転手として稼ぐわずかな現金では、7人家族がひしめきあって住む家の家賃を手助けするので精いっぱいだ。

 ソーシャルワーカーのマナフ・ハレドさんは、女性が結婚できるかどうかは、就職しているかどうかによると説明する。「多くの男性は働いていて、家計に貢献できる女性の方を好む」

 ISがモスルを支配していた3年の間、この街はバグダッドの中央政府から切り離されていた。IS占領下では公共部門で働く人たちに賃金が支払われなかった。女性の保護活動に携わるアシュラフ・イスマイルさんは、「失業と長期間の給与の支払い停止で、家族生活を始めたい多くの若者たちが結婚できずにいる」と語る。