【6月16日 AFP】ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)が流入した隣国バングラデシュの難民キャンプで不穏な動きが生まれている。その原因は大量の覚せい剤だ。職を失ったロヒンギャ難民が覚せい剤の運び屋となり、そのネットワークはミャンマー国内やロヒンギャを排撃したミャンマー軍兵士にまで及んでいる。

 東南アジアで数十年前から流通し、現地で「ヤーバー」と呼ばれている小さな赤いメタンフェタミンの錠剤がミャンマーから西に流出し、約100万人のロヒンギャ難民がいるバングラデシュ南東部コックスバザール(Cox's Bazar)を横切って運ばれている。

 麻薬を売って得た金は深く傷ついたロヒンギャ難民の社会に新たな問題をもたらしている。バングラデシュ当局は、薬物抗争関連の発砲事件や恐喝、誘拐などが増えていると警鐘を鳴らす。混乱している難民キャンプはさらに複雑で危険な問題にさらされている。シャムラプル(Shamlapur)難民キャンプのロヒンギャのリーダー、アブドゥス・サラム(Abdus Salam)さんは「多くの若い男性が麻薬王のわなにはまっていく」「難民は簡単に利用される」と述べた。

 ミャンマー軍がロヒンギャ掃討作戦を開始した昨年8月以降、これまでに100人を超えるロヒンギャ難民が麻薬関連の容疑で逮捕されている。犯罪組織が使い捨ての安い労働力を運び屋として勧誘し、コックスバザールでの薬物押収量は跳ね上がっている。

 今年3月15日にはコックスバザールの海岸沿いで、運び屋が捨てた180万錠の錠剤が見つかった。その数日後には数隻のボートからさらに90万錠が発見された。

 だが、バングラデシュの薬取取締局によると、さらに多くの覚せい剤が発見されないまま国内に流入しており、今年その数は2億5000万~3億錠に上る見込みだという。

 麻薬資金は予想外の方法でいくつかの境界線をあいまいにしている。まずロヒンギャを嫌悪し、彼らの放逐に一役買ったミャンマー・ラカイン(Rakhine)州の仏教徒らが、バングラデシュでの覚せい剤密売に参入してきている。

「ヤーバー」の価格はバングラデシュに入ると1錠3~3.5ドル(約330~380円)と約3倍に跳ね上がる。バングラデシュ国境警備隊の司令官、アサドゥドザマン・チョードリー(Asadud Zaman Chowdhury)中佐は「誰が仏教徒で、誰がロヒンギャかなんて誰も気にしない」と語った。