【5月18日 AFP】夏季に生まれた犬は、心臓および動脈の疾患を発症する危険性がより高いとの研究論文が17日、英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された。

 研究では、循環器疾患にかかりやすい遺伝的素因を持たない犬種で、7月生まれの発症リスクが1月生まれより74%高いという特に顕著な季節差が見て取れた。そのことから研究チームは大気汚染などの環境的要因で夏季の高リスクを説明できると推測した。

 論文の主執筆者で、米ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)のメアリー・レジーナ・ボーランド(Mary Regina Boland)助教は「今回の研究結果が重要な意味を持つ理由は、犬の心臓が人間の循環系に著しく類似したモデルだからだ」と指摘する。

 人間と犬が一緒に生活し、同じ環境的影響にさらされている事実は、発症リスクの季節的な上昇を招く原因が共通していることを強く示唆していると、ボーランド助教はAFPの取材に語った。

 研究チームは3か国1050万人分の健康データを調査した先行研究で、妊娠第1期に母親の胎内で夏の大気汚染にさらされた人は、成人になって心調律異常(不整脈)に見舞われる確率が9%高いことを明らかにしていた。

「まとめると、今回の研究と人間での先行研究は、妊娠初期に大気中微粒子にさらされることが後年の心血管疾患リスクを上昇させるとする説を裏づけている」と、ボーランド助教は説明している。

 研究チームは今回の最新研究で、250種以上、12万9778匹の犬の心臓血管データを詳細に調べた。遺伝的に夏季に心臓疾患を発症しやすいタイプではない犬種には、ノーフォークテリア、ピカルディシープドッグ、キングチャールズスパニエル、ボーダーテリア、ハバニーズなどが含まれていた。

 循環器疾患のある犬の割合については、レトリーバー、ポインター、ブルドッグ、ドーベルマン、パグ、チワワなどの種で0.5%以下、ハウンド、コリー、シープドッグなどでは2%近くと開きがあった。

 米ニューヨーク市(New York City)で治療を受けた患者175万人の健康データを1688種の疾患と照らし合わせた2015年の研究では、55種の疾患に誕生月との統計的に有意な関連性があることが判明した。

 注意欠陥多動性障害(ADHD)、ぜんそく、生殖疾患、呼吸器疾患などの発症率が他より高いのは、10月~12月の誕生月であることが、この研究で明らかになった。(c)AFP