■「何も悪いことをしていない」

 クマルさんも難民認定申請を行っていたが、申請理由は不明だ。

 それでも「インドからの政治難民として入国してから1年、そのほとんどを収容施設の中で拘束されていた」(田中さん)ことは事実だ。

「日本の入管法・難民認定法の無慈悲さを改めて思い知らされる」

 被収容者らは、たとえ施設の職員らに体調不良を訴えても睡眠薬や抗不安薬を渡されるだけだと主張する。

 JARの石川代表理事は「被収容者の約20%が睡眠薬のような薬を渡されているのでは」と懸念する。「現状を把握するための独立した監視体制なども整っていない」と指摘した。

 退去強制令書を発布された難民認定申請者は無期限で拘束されることもあり、田中さんはこのような「長期収容は精神的にも肉体的にもダメージを与え続ける」と指摘する。

 これまでも、入管収容施設の被収容者らがハンガーストライキを行ったことはあったが、大きな変化にはつながっていない。田中さんによると牛久では、クマルさんの死と職員らの無関心ともとれる態度によって新たな怒りが広がりつつあるという。

 クマルさんの友人の一人は、自身には法的な滞在許可が下りているものの、当局による追及を恐れて匿名の取材のみに応じた。

「彼は何も悪いことをしていない。けんかもしていないし泥棒もしていない。それなのに1年も牢屋(ろうや)に入れられていたのはおかしい」 (c)AFP/Harumi OZAWA/Sara HUSSEIN