【5月16日 AFP】体内時計の自然のリズムが乱れることよって、気分障害リスクが高まるとした研究論文が16日、発表された。一般的な孤独感から、重いうつ病、双極性障害までその範囲は広いという。

 研究は9万1000人以上のデータを対象に行われた。同様のものとしては過去最大規模だという。今回、「概日リズム」への干渉が記憶や集中力の持続時間の低下といった認知機能の低下につながることも分かった。

 脳内の概日リズムをつかさどる時計中枢は、睡眠パターンやホルモンの放出のみならず、体温にも影響を与えている。先行研究では、こうしたリズムの乱れについて、精神衛生面にマイナスの影響を与えるものと考えられるとしていたが、決定的な結論には至っていなかった。データの大半が自己報告によるもので、対象集団も小規模、さらにはデータを不正確のものとし得る要因が排除できていなかったことがその理由だ。

 今回の研究のために、英グラスゴー大学(University of Glasgow)の心理学者ローラ・ライアル(Laura Lyall)氏率いる国際研究チームは、37歳から73歳までの9万1105人に関する健康データを分析した。データは英バイオバンク(UK Biobank)によるもので、長期にわたる調査を通じて得られた最も包括的な内容のものの一つだ。

 調査に参加したボランティアらは加速度計を着用して、休息と活動のパターンを計測。得られた記録は精神疾患の病歴と比較された。研究者らによると、夜間勤務や時差ボケの繰り返しといった生活を経験している人では、気分障害や不快感、認知的問題などの生涯リスクが高まる傾向がみられた。比較対象となったのは、バイオバンクの病歴データだ。

 英精神医学専門誌ランセット・サイキアトリー(Lancet Psychiatry)に発表された研究論文は、今回の結果について、老齢、不健康な生活習慣、肥満、子ども時代のトラウマなど、潜在的要因を考慮に入れても、同様の結果が得られたとしている。

 研究では、気分障害リスクの原因が体内時計の乱れによるもので、その逆ではないとの結論を導き出すまでには至らなかった。ただ「気分障害が、概日リズムの乱れに関連しているとの考えを強化するもの」にはなったとライアル氏は話した。

 研究者らは、仕事/休息のサイクルの計測が、重いうつ病や双極性障害のリスクがある人々に注意を促し、治療を行う上で助けになる可能性があるとしている。(c)AFP/Marlowe HOOD